日本地球惑星科学連合2015年大会

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[U-06] 宇宙・太陽から地球表層までのシームレスな科学の新展開

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*松見 豊(名古屋大学太陽地球環境研究所)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、石坂 丞二(名古屋大学地球水循環研究センター)、坪木 和久(名古屋大学・地球水循環研究センター)、榎並 正樹(名古屋大学 年代測定総合研究センター)

18:15 〜 19:30

[U06-P18] メソ降水系や台風を対象とした航空機観測

*篠田 太郎1坪木 和久1小池 真2新野 宏3佐藤 正樹3 (1.名古屋大学地球水循環研究センター、2.東京大学大学院理学系研究科、3.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:航空機観測, 台風, メソ降水系, 雲物理過程, 観測測器

航空機観測は航空機の飛行経路に沿って時空間的に密な結果を得ることができるため、地上観測や衛星観測とともに地球科学研究においては有益かつ重要な観測手段である。日本気象学会は日本学術会議が公募した第22期学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン「学術大型研究計画」に「航空機観測による大気科学・気候システム研究の推進」を提案し、観測計画の準備を進めている。具体的には、温室効果気体の循環と収支過程、対流圏内の様々な物質における化学的な変質過程、エアロゾルと雲の相互作用、雲物理過程などについて航空機を用いた観測計画の策定を行っている。このうち、メソ降水系や台風を対象とした観測計画においては、これらの内部や周辺大気環境場における3次元気流場、温湿度場、雲物理的特性などの観測を行うことで、これらの現象における雲力学、雲物理学的な理解を進める必要があると考えられる。航空機観測の結果をデータ同化システムと組み合わせることにより、極端現象の予報精度の向上も期待できる。
しかしながら、日本においてはメソ降水系や台風を対象とした航空機観測の実施例は非常に限られている。この分野における航空機観測の経験や測器が決定的に不足していることは否めない。最初に取り組むべき課題は有用な観測測器の選択と開発である。例えば、複数の観測チャンネルをもつドロップゾンデを保有している日本の研究期間は無いが、この測器はメソ降水系や台風の周辺における大気環境場を連続して観測するために必要不可欠な測器である。最近、著しく研究が進んでいる台風海洋相互作用の研究を行うためには、大気環境場を観測できるドロップゾンデだけでなく、海中の水温プロファイルを観測できるairborne expendable bathythermograph (AXBT)や水温と塩分濃度のプロファイルを観測できるairborne expendable conductivity, temperature, and depth probe (AXCTD)を組み合わせた測器を用いることが有効であると考えられる。雲・降水粒子を直接観測することのできる雲粒子ゾンデを航空機から投下するシステムを開発することができれば、航空機が侵入できない降水セルの内部領域などの直接観測を行うことができる。このような測器を用いて取得されたメソ降水系や台風内部の雲物理特性の観測結果は衛星観測や数値モデルの検証に有効であると考えられる。また、エアロゾルの種類や数濃度と雲粒子の同時観測を行うことで、巨大凝結核が暖かい雨の併合成長過程に与える影響や降水システムの組織化や加熱プロファイルに与える影響を検討することも可能となることが期待される。航空機搭載型のライダ(水蒸気ライダ)やレーダ(ドップラーレーダ・偏波レーダ)を用いることで、台風の発生期や急発達期における内部構造の変化を捉えることができることも期待される。メソ降水系や台風を対象とした航空機観測については、日本だけでなく東アジアや西太平洋域の国や地域との連携が不可欠である。これらの国々における航空機観測を実施するためのノウハウ(飛行計画の提出や飛行許可の取得)も積んでいく必要がある。また、観測測器を使える状態に維持することや後方支援体制の確立なども行っていく必要がある。