日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG30] 陸域生態系における水・炭素・窒素などの循環に関する研究

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*加藤 知道(北海道大学農学研究院)、平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)、佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)、平田 竜一(独立行政法人国立環境研究所)

18:15 〜 19:30

[ACG30-P03] モンゴルに生育するシベリアカラマツの過去100年間の環境変動に対する応答

*北山 あさみ1杉本 敦子2米延 仁志3ミジズーレン ビアンバズーレン4ロペス ラリー5 (1.北海道大学環境科学院、2.北海道大学地球環境科学研究院、3.鳴門教育大学大学院学校教育研究科、4.モンゴル農業大学、5.山形大学農学部)

キーワード:モンゴル, カラマツ, 年輪幅, 炭素安定同位体比, 乾燥ストレス

モンゴルの森林はシベリアタイガ林の南限域に位置し、降水量はモンゴル国内では比較的多い300-400mm程度の山岳地域の永久凍土上にパッチ状に分布する。このことから、水分環境が樹木生育を制限する支配要因であると予想される。近年、モンゴルでは気温上昇や降水量の減少が報告され(Batima, 2006)、これらの変化が樹木の枯死や分布域の変化、それに伴い永久凍土層の融解を引き起こす可能性がある。本研究では、水分条件や生育環境が異なると予想されるヘンティー山脈に位置するテレルジ(47N, 107E)、森林域北部のフグスブル湖周辺のサガンヌール(51N, 99E)とハトガル(50N, 100E)、ハンガイ山脈に位置するタリアット(48N, 100E)とウヤンガ(51N, 102E)の5地域を調査対象地に設定した。各地域でシベリアカラマツの年輪コアを採取し、年輪幅を測定した。これらのうち、2地域の炭素安定同位体比データを測定し、環境変動に対する樹木の応答を調べ、サイト間で比較を行った。
テレルジの年輪幅は前年及び当年の気温と負、降水量とは正の相関が見られ、同位体比は前年及び当年の気温と正、降水量とは負の相関が見られた。年輪幅は前年の降水量と、同位体比は当年の降水量とより明瞭な関係が見られた。これは前年の水分環境が翌年の幹の肥大成長を決定し、幹に固定される炭素はその年の光合成産物の寄与が大きいという可能性を示す。さらに近年(1997年以降)、テレルジのカラマツの年輪幅は非常に狭く、同位体比は高い値を示し、この地域に生育するシベリアカラマツが厳しい乾燥ストレスを受けていることを示唆している。一方、森林域北部サイトの年輪幅と同位体比は気象変数との間に明瞭な相関関係を示さず、テレルジよりも比較的湿潤な環境下でカラマツが生育しているためと推察される。また、テレルジで見られた近年の大きな同位体比の上昇も見られなかった。