日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT26] 地球ゲノム学

2015年5月26日(火) 16:15 〜 18:00 104 (1F)

コンビーナ:*遠藤 一佳(東京大学大学院理学系研究科)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、座長:遠藤 一佳(東京大学大学院理学系研究科)

17:54 〜 17:57

[BPT26-P04] 巻貝における貝殻獲得の遺伝的基盤

ポスター講演3分口頭発表枠

*清水 啓介1遠藤 一佳2工藤 哲大3 (1.京都大学・院理、2.東京大学・院理、3.エクセター大学)

キーワード:貝殻進化, レチノイン酸経路, 軟体動物

カンブリア紀前期に軟体動物は石灰化した外骨格として貝殻を獲得し、節足動物に次ぐ大きな分類群にまで繁栄してきた。しかし、環境から身を守るために重要な形質である貝殻の獲得を可能とした遺伝的基盤に迫る研究はこれまでにほとんど行われていない。本研究では動物の形態形成に重要なホメオティック遺伝子を制御することで知られるレチノイン酸経路に着目した。カサガイの仲間であるクサイロアオガイ(Nipponacmaea fuscoviridis)のトロコフォア幼生期・ベリジャー幼生期においてレチノイン酸分解酵素であるcyp26の発現解析を行った結果、貝殻腺と外套膜の縁辺部での発現が確認された。さらに、レチノイン酸の機能解析を行なった結果、貝殻腺で発現するホメオティック遺伝子の1つであるengrailedの発現が抑制され、貝殻が小さく、石灰化が起こらない表現型が観察された。これらの結果は、レチノイン酸経路が発生初期の形態形成を上流で制御するengrailedを制御することで、軟体動物における貝殻という新奇形質の獲得に重要な役割を果たした可能性を示唆する。