日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM27] 大気圏・電離圏

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)

18:15 〜 19:30

[PEM27-P10] VHF帯遠距離伝搬波を用いた九州-沖縄付近での 強いEsの広域構造とその持続性

*柳澤 伸矢1冨澤 一郎1山本 淳2 (1.電気通信大学宇宙・電磁環境研究センター、2.海上保安大学校海事工学講座)

キーワード:電離圏, スポラディックE層, 広域構造

我々は強いスポラディックE(Es)で反射されたVHF帯電波を調布と呉にて同時受信している[1]。我々の過去の観測から強いEsは非常に細長い数百kmの水平構造を持っていることが分かってきた[2]。本論文では主として2013年9月14日と2014年5月11日と2014年7月1日に九州-沖縄付近で観測された強いEsの広域構造と移動特性、持続時間について議論する。3つのEsについての比較からほぼ同じ観測範囲を通過しているという点で共通していて、構造などの特性の比較を行う上で適している。
(1)2013年9月14日17時JST頃に観測されたEsは、波面長が約300 kmであった。 移動方向は南東方向、速度は約40 m/s、波面幅は東側では7~20 kmと波面長に比べて狭く、西端では120 kmと広がりかつその部分の移動速度および方向がわずかに異なっていた。そのため全体構造は細長い三角形状の波面が中央付近で折れ曲がった形と推定できる。西端部分は時間経過と共に太くなり、一方東側の部分は変化せず構造変化の様相が異なった。またEs持続時間は2時間と長時間であった。
(2)2014年5月11日19~21時JST頃に観測されたEsは、2つの波面構造を持って北西方向へ移動した。2つの波面は約50 m/sと約60 m/sの速度で移動し、波面長は約300 kmと約400 kmとほぼ同じであったが、波面幅は5~20km、5~80 kmと大きく異なっていた。また持続時間は共に約1時間であった。
(3)2014年7月1日10~11時JST頃にEsは、2つの波面を持って北西方向へ移動した。(2)と異なる点として2つの波面は約50 m/sと約150 m/sの大きく異なる速度で移動し、途中で交差した。波面長は約380 kmと約300 kmとほぼ同じであったが、(2)と同様に波面幅は7~35kmと55~180 kmと大きく異なっていた。また持続時間は2つとも約1時間であった。
これら同じ緯度・経度の範囲で観測された3つの強いEsは、長さは300~400kmとほぼ同じであるが、Es構造および移動速度が大きく異なっていた。移動方向は(1)は南東だが(2)と(3)は北西で逆だった。さらに継続時間は(1)が約2時間であるのに対し(2)、(3)は約1時間と半分程度の時間しか高電子密度構造を持続できなかった。以上の結果から、強いEsが細長い構造を持続して移動可能な時間は約1~2時間と推定できる。
講演では解析方法、解析例を増やしEsの移動特性や特徴・構造などの比較結果について詳しく報告する。
[1] 山幡 琢也, 冨澤 一郎, 山本 淳: VHF帯遠距離伝搬受信による広域Es構造観測システム開発,SGEPSS, B005-P038, 2012.
[2] 冨澤 一郎, 山幡 琢也, 山本 淳: VHF遠距離伝搬によるEs広域構造と移動特性, SGEPSS, B005-33, 2012.