日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC48] 火山防災の基礎と応用

2015年5月24日(日) 11:00 〜 11:45 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、藤田 英輔(防災科学技術研究所観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)

11:39 〜 11:42

[SVC48-P04] 硫黄溶岩流の諸問題

ポスター講演3分口頭発表枠

*千葉 達朗1丹保 俊哉2 (1.アジア航測株式会社、2.立山カルデラ砂防博物館)

キーワード:立山, 硫黄, 枕状溶岩, アア溶岩, パホイホイ溶岩, 防災

1.はじめに
 かつて、日本国内の活火山の火口内部や地熱地帯に数多く見られた硫黄鉱山は、昭和40年代にすべて閉山となった。しかしながら、硫黄鉱山跡地では人の手を借りずに硫黄が噴気孔の周囲などに堆積していることが多い。また、噴気孔の温度が上昇した場合には、液体状の溶岩として流れることもまれではない。流下の際に自然発火した場合には、周囲に火災を発生させたり、亜硫酸ガスを大量に発生させる事例もある。本ポスターでは、国内の活火山での流下事例をもとに、火山防災的な課題について問題提起する。また、硫黄溶岩流の形態的な特徴を玄武岩質溶岩流と比較紹介する。

2.立山地獄谷の事例
 弥陀ヶ原火山の地獄谷では、最近になって噴気活動が活発化し、2012年頃から、遊歩道が通行止めとなっている。2010年の5月には硫黄溶岩流が流下、自然発火による火災も発生している(増渕、2013)。この付近ではこれまでも多数の硫黄溶岩流の流下が繰り返されていることは、記録からも地質学的証拠からも明らかである。
 ここで観察できる硫黄溶岩流は、黒色、黄色、緑灰色などのさまざまな色調を示す。厚さは1cmから10cm程度であるにも関わらず、アア溶岩流、パホイホイ溶岩流、柱状節理、枕状溶岩などの形態的特徴を示す。ポスターでは、写真や動画を示すとともに、実物の試料も示す。玄武岩質溶岩流のアナログモデル実験結果としても興味深い。

3.まとめ
 知床硫黄山では1935~1936年の噴火で大量の硫黄の噴出し、1日当たり最大数千トン、総噴出量は約20万トンに達し、カムイワッカ川や海浜は黄色い硫黄で覆われた(渡辺ほか,1937)。立山の事例は、規模は違うものの、詳細な検討が可能であり、このような硫黄溶岩流に対する防災対策を検討する上で重要である。

文献
 増渕佳子(2013)富山県立山地獄谷で2010年5月に発生した硫黄溶岩の記載岩石学的特徴.富山市科学博物館研究報告,36,1-10
 渡辺武男・下斗米俊夫(1937)北見国知床硫黄山,特に昭和11年の活動に就いて,火山,3, 213-262.