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[HQR23-05] 2011年東北地方太平洋沖地震時の香取市与田浦での液状化-流動化のメカニズム:与田浦トレンチの調査から
キーワード:液状化-流動化, 人工地層, 利根川, 2011年東北地方太平洋沖地震, トレンチ調査
2011年東北地方太平洋沖地震の際,利根川流域では旧河道の埋立地を中心に広く液状化-流動化現象がみられた.その中の与田浦周辺において,トレンチ調査を実施し,液状化-流動化が発生した層準や,その発生メカニズムを検討した.
調査地点は,かつて与田浦の水域であり,厚い泥層が堆積していた.そこを約4mの厚さでサンドポンプ工法によって浚渫砂が埋め立てられた.1987年千葉県東方沖地震時にこの埋立地で噴砂が生じた.さらに2011年東北地方太平洋沖地震時にも亀裂を伴う規模の大きな噴砂が発生した.調査地点は,その亀裂の一部にかかるように一辺が10mの正方形の場所を矢板で仕切り,その中で地下水を揚水し,地下水位を下げ,深度約3.2mまでの掘削をおこない,その断面を観察し,その断面に発泡ウレタン系樹脂をアセトンで薄めたものを染み込ませるなどし,剥ぎ取り,断面を詳しく観察した.その結果,液状化-流動化部分は人工地層内の一部であり,ここから砂が地下水と共に流動し,地表に噴出したことが明らかとなった.以下に,人工地層の層序と液状化-流動化のメカニズムを述べる.
人工地層の層序:下位より砂礫及び貝殻混じり中粒砂からなる下部埋立アソシエーション(層厚約1.2m),よく締まった泥質分が無く淘汰の良い極細粒砂とラミナが発達する泥層からなる中部埋立アソシエーション(層厚約1.4m),貝殻混じりできわめてよくしまった細粒砂からなる上部埋立アソシエーション(層厚約0.5m),砕石からなる最上部盛土アソシエーション(層厚約0.1m)から構成される.層相・埋立の歴史より,下部・中部・上部の埋立アソシエーションは,サンドポンプ工法によって埋め立てられた.
下部埋立アソシエーションは,トラフ型斜交層理が発達する砂礫層からなる下部バンドル(層厚約0.4m),低角の平板状の斜交層理が発達する中部バンドル(層厚約0.5m),平行葉理がみられる貝殻混じりの中粒砂主体の上部バンドルからなる.上部バンドル中には,液状化-流動化により初生的な堆積構造が乱されゆる詰まりとなっている部分が広くみられる.特に中部アソシエーションの難透水性の泥層によって覆われている上部バンドル最上部の厚さ約10cm部分は全面的に流動化によって乱れている.
中部アソシエーションは,それぞれ厚さ5-10cmの淘汰の良い極細粒砂と平行ラミナの発達する泥層との互層からなる下部バンドル(層厚約0.4m),平行ラミナが発達し希に厚さ0.5-1cmの泥層を挟み淘汰の良い細粒砂からなる上部バンドル(層厚約1.0m)からなる.下部バンドルには波長0.2m程度,上部バンドルには波長約2mの波状変形がみられる.下部バンドルには,波状変形が強く進行したボールアンドピロー構造がみられる.また,これら変形構造を切って下部アソシエーションの液状化-流動化部分につながる砂脈が複数みられる.この砂脈は上部アソシエーション・最上部アソシエーションも貫いており,今回の液状化-流動化現象によるものと考えられる.
上部アソシエーションは,貝殻混じりで極めてよく締まり平行ラミナが発達する.下位の中部アソシエーションを削剥し堆積している.
液状化-流動化のメカニズム:中部アソシエーション中の波状変形やボールアンドピロー構造は,砂脈によって切られていること,上位層に切られることから堆積直後の変形によるものと推定される.一方,下部アソシエーションの液状化-流動化部分は地表につながる砂脈につながることから,その多くは今回の地震時によるものと考えられる.なお,中部アソシエーション~最上部アソシエーションにみられる砂脈には,2011年の地震時に切られているものもあり,それらは1986年の地震時のものと考えられる.
下部アソシエーション上部バンドルは,この上位の泥層によって覆われているため,地震時に下部アソシエーションの地下水位が上昇したものの,泥層があることからこの直下において液状化状態となり,地波が発生し,中部アソシエーション以上の層準に亀裂が生じ,ここを下部アソシエーションの液状化した砂が地下水と共に流動し地表へ噴出したものと推定される.
調査地点は,かつて与田浦の水域であり,厚い泥層が堆積していた.そこを約4mの厚さでサンドポンプ工法によって浚渫砂が埋め立てられた.1987年千葉県東方沖地震時にこの埋立地で噴砂が生じた.さらに2011年東北地方太平洋沖地震時にも亀裂を伴う規模の大きな噴砂が発生した.調査地点は,その亀裂の一部にかかるように一辺が10mの正方形の場所を矢板で仕切り,その中で地下水を揚水し,地下水位を下げ,深度約3.2mまでの掘削をおこない,その断面を観察し,その断面に発泡ウレタン系樹脂をアセトンで薄めたものを染み込ませるなどし,剥ぎ取り,断面を詳しく観察した.その結果,液状化-流動化部分は人工地層内の一部であり,ここから砂が地下水と共に流動し,地表に噴出したことが明らかとなった.以下に,人工地層の層序と液状化-流動化のメカニズムを述べる.
人工地層の層序:下位より砂礫及び貝殻混じり中粒砂からなる下部埋立アソシエーション(層厚約1.2m),よく締まった泥質分が無く淘汰の良い極細粒砂とラミナが発達する泥層からなる中部埋立アソシエーション(層厚約1.4m),貝殻混じりできわめてよくしまった細粒砂からなる上部埋立アソシエーション(層厚約0.5m),砕石からなる最上部盛土アソシエーション(層厚約0.1m)から構成される.層相・埋立の歴史より,下部・中部・上部の埋立アソシエーションは,サンドポンプ工法によって埋め立てられた.
下部埋立アソシエーションは,トラフ型斜交層理が発達する砂礫層からなる下部バンドル(層厚約0.4m),低角の平板状の斜交層理が発達する中部バンドル(層厚約0.5m),平行葉理がみられる貝殻混じりの中粒砂主体の上部バンドルからなる.上部バンドル中には,液状化-流動化により初生的な堆積構造が乱されゆる詰まりとなっている部分が広くみられる.特に中部アソシエーションの難透水性の泥層によって覆われている上部バンドル最上部の厚さ約10cm部分は全面的に流動化によって乱れている.
中部アソシエーションは,それぞれ厚さ5-10cmの淘汰の良い極細粒砂と平行ラミナの発達する泥層との互層からなる下部バンドル(層厚約0.4m),平行ラミナが発達し希に厚さ0.5-1cmの泥層を挟み淘汰の良い細粒砂からなる上部バンドル(層厚約1.0m)からなる.下部バンドルには波長0.2m程度,上部バンドルには波長約2mの波状変形がみられる.下部バンドルには,波状変形が強く進行したボールアンドピロー構造がみられる.また,これら変形構造を切って下部アソシエーションの液状化-流動化部分につながる砂脈が複数みられる.この砂脈は上部アソシエーション・最上部アソシエーションも貫いており,今回の液状化-流動化現象によるものと考えられる.
上部アソシエーションは,貝殻混じりで極めてよく締まり平行ラミナが発達する.下位の中部アソシエーションを削剥し堆積している.
液状化-流動化のメカニズム:中部アソシエーション中の波状変形やボールアンドピロー構造は,砂脈によって切られていること,上位層に切られることから堆積直後の変形によるものと推定される.一方,下部アソシエーションの液状化-流動化部分は地表につながる砂脈につながることから,その多くは今回の地震時によるものと考えられる.なお,中部アソシエーション~最上部アソシエーションにみられる砂脈には,2011年の地震時に切られているものもあり,それらは1986年の地震時のものと考えられる.
下部アソシエーション上部バンドルは,この上位の泥層によって覆われているため,地震時に下部アソシエーションの地下水位が上昇したものの,泥層があることからこの直下において液状化状態となり,地波が発生し,中部アソシエーション以上の層準に亀裂が生じ,ここを下部アソシエーションの液状化した砂が地下水と共に流動し地表へ噴出したものと推定される.