日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS21] 大気化学

2015年5月27日(水) 16:15 〜 18:00 201B (2F)

コンビーナ:*澤 庸介(気象研究所海洋・地球化学研究部)、竹川 暢之(首都大学東京 大学院理工学研究科)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、座長:中山 智喜(名古屋大学 太陽地球環境研究所)

17:33 〜 17:36

[AAS21-P19] MIROC3.2ナッジング化学気候モデルによるフロン減少期とフロン増加期のオゾン全量の季節別全球トレンドマップ

ポスター講演3分口頭発表枠

*小濱 里沙1秋吉 英治1門脇 正尚1山下 陽介1 (1.国立環境研究所)

キーワード:オゾン全量, トレンド, 化学気候モデル, 全球マップ, ERA-Interim

2014年11月の大気化学討論会における発表では、札幌とつくばにおけるオゾン全量の観測値が示すトレンドのうちどの程度がフロンの影響によるものかを国立環境研究所のMIROC3.2化学気候モデルを使用してChemistry-Climate Model Initiative(CCMI)の推奨実験REF-C1SDの結果を用いた数値実験によって解析した結果を報告した。このモデルはERA-Interimデータをナッジングした数値モデルである。使用した数値実験は、(1)対象期間に観測されたオゾン層破壊物質(ODS)濃度と温室効果ガス濃度などの変化を与えた実験(REF-C1SD実験)と、(2)ODS濃度のみをオゾンホール発生以前の1979年に固定した実験(SEN-fODS1979実験)の2種類の実験である。
本研究では、フロンのオゾン全量への影響を全球規模に拡大して調べるため、上記2種類の化学気候モデル実験のオゾン全量トレンドの季節別全球マップを作成した。その結果、(1)REF-C1SD実験では、1979-1996年のフロンが減少する期間において全球的に減少トレンドが見られ、冬の中緯度や春の極域にはそのトレンドが大きく、それぞれ経度方向に構造が見られた。南半球においても冬と春はそれぞれ中緯度で経度方向に構造を示した。(2)SEN-fODS1979実験では、1979-1996年の期間においてODS濃度を1979年値に固定することによってオゾン全量の減少トレンドの値は小さくなるが、(1)の実験の冬や春でみられた経度方向の構造は残った。南半球の冬や春においては(1)の実験で見られた南極オゾンホールが見られず、場所によっては増加トレンドを示した。オゾン全量が示す経度方向の構造はフロン以外の影響(主に輸送など)によって生じたものと考えられる。また、(1)REF-C1SD実験から(2)SEN-fODS1979実験の差を取ることによってODSの増加/減少トレンドによるオゾン全量の減少/増加トレンドが見られた。両極域の春に見られた大きな負のオゾントレンドは、ODSの濃度の増加による影響を顕著に示している。また、この差のトレンドの分布には経度方向の構造がほとんど見えないことがわかった。
発表では、ODSの濃度がゆるやかに減少した1997~2011年の期間のトレンドマップも示す。