日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG21] 自然資源・環境の利用と管理

2015年5月27日(水) 14:15 〜 16:00 101A (1F)

コンビーナ:*上田 元(東北大学大学院環境科学研究科)、大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、座長:大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、上田 元(東北大学大学院環境科学研究科)

15:45 〜 16:00

[HGG21-07] 中国内モンゴル呼倫湖自然保護区における旅行に対する観光客と住民の意識

*韓 国栄1古谷 勝則1 (1.千葉大学大学院 園芸学研究科)

キーワード:旅行, 環境と持続可能な開発, 自然保護区, 草原, 自然環境保全地域, 評価項目

はじめに
自然保護区は生物多様性が高く、観光客にとって魅力的なところである。また,自然保護区での観光活動は生態系への理解を深めることでもある。中国内モンゴル自治区は,国家級自然保護区の指定面積が全国一位である。その内、草原類型の自然保護区は観光客に注目されている。観光客の草原生態系への理解,自然保護活動を促進するのが観光管理の一つの課題である。また,観光客の観光活動を促進するには,観光客の評価だけではなく,住民の評価も必要である。そこで、本研究では呼倫湖自然保護区における旅行に対する観光客と住民の意識を把握することにより、住民と観光客の評価項目を明らかにした。

研究方法
 呼倫湖自然保護区における住民と観光客を対象に、2014年8月末から9月中旬にかけて意識調査を実施した。意識調査はインタビュー方式で192 名の有効回答を得た。その内,住民は56名と観光客は136名であった。意識調査では,回答者の属性と、呼倫湖自然保護区の旅行に対する意識を把握した。旅行に対する意識としては、自然保護区における旅行の良いところと足りないところについて回答してもらった。呼倫湖自然保護区は,中国の内モンゴル自治区フルンボイル市に位置する国家級自然保護区である。保護区内に内モンゴルの乾性草原とは対照的な湿性草原が広がる。

結果
住民の回答者の属性では男性27名,女性29名であった。回答者の69%は高校以上の学歴であった。農牧民は最も多く66%であった。観光客回答者の属性では男性65名,女性71名であった。回答者の77%は高校以上の学歴を持っていた。36%は学生であり,13%は公務員などの職業に就いていて,36%は無職と自由職であった。
現地インタビュー調査から得た保護区における旅行についての評価項目は良いところは28項目,足りないところが16項目で、合計44項目であった。評価項目は自然環境、地域文化体験、宿泊施設、交通,娯楽施設,サービス対応,施設整備,旅行費用など広い範囲で回答があった。
 観光客が回答した「良いところ」では、「チケットが安い」が最も多く46%であった。次に「豪快な民族雰囲気」と「食べ物がおいしい」が36%であった。「湖が大きい」と「自然」も32%であった。また、住民の有効回答者が回答した「良いところ」では、「旅行費用が安い」項目を回答したのが最も多く57%であった。次に「チケットが安い」が55%であった。「食べ物がおいしい」と「自然」も42%であった。
 観光客の回答した「足りないところ」では、「遊ぶところが少ない」項目を回答したのが最も多く31%であった。次に「風景が単一」と「宿泊」が27%であった。「食べ物」と「人が少ない」も26%であった。また、住民が回答した「足りないところ」では、「気温差」と「宿泊」項目を回答したのが最も多く33%であった。次に「野生動物に会わない」が32%であった。「広い」,「食べ物」,「風景が単一」と「遊ぶところが少ない」も28%であった。

4.おわりに
本研究では、中国内モンゴル呼倫湖自然保護区における旅行についての意識を明らかにした。保護区旅行の「良いところ」で、観光客と住民が共通なのは、旅行費用やチケットなどが安価であること、食べ物がおいしいことなどである。一方、観光客は湖や自然も評価していた。次に、「足りないところ」では、観光客と住民で共通なのは、宿泊と食べ物、風景が単一であった。異なる部分は、観光客は遊ぶところが少ないと回答し、住民は気温差を回答していた。