日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS27] 地震予知・予測

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*中島 淳一(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)

18:15 〜 19:30

[SSS27-P06] トンガ・ケルマディック海溝で発生するプレート境界型地震と潮汐との関係

*弘瀬 冬樹1上垣内 修2前田 憲二1 (1.気象研究所、2.気象庁)

キーワード:固体地球潮汐, 海洋潮汐荷重効果, ΔCFF, p値, トンガ・ケルマディック海溝

トンガ・ケルマディック海溝は世界でも有数の地震多発帯である.プレート収束速度は南から北にかけて増加し,それに比例して地震発生率は高くなっている[Ide, 2013, Nature Geo.].この地域では,Mw7.5以上の大規模な地震活動(プレート境界型以外の地震も含む)は1980年前後と2010年前後に比較的集中している.前者の期間については,Tanaka, et al., [2002, GRL]が1977年~2000年のGCMT解データを用いて,1982年12月トンガ地震(Mw7.5)前にp値(Schuster, 1897, PRSL,地震活動と潮汐との相関を表す指標で0-1の間の値を取る.通例として0.05以下であれば有意に相関が高いと判断される)が低下し,本震後に増加していることを指摘した.後者の期間については,2009年3月に同規模(Mw7.6)のプレート境界型地震が1982年の本震付近で発生している.
本研究では,先行研究[Tanaka, et al., 2002, GRL]で用いられたデータの期間を延長し,2009年本震前後のp値の時間変化が1982年と同様の傾向を示すか調査した.用いたデータはGCMT解のプレート境界型地震(すべり角60-120°,深さ70 km以浅,走向150-230°,1977年~2013年)である.地殻の理論潮汐応答は,固体地球潮汐と海洋潮汐荷重効果の和で表現され,前者はearthtide_mod[小沢, 1974, 測地学会誌; 中井, 1979,緯度観測所彙報 上垣内, 2015, 私信]を,後者はGotic2 [Matsumoto, et al., 2001], をベースに改造したプログラム[Kamigaichi, 1998, PMG; 上垣内, 2015, 私信]をそれぞれ用いて,各イベントの位置における歪テンソル6成分を算出した.このとき,グリーン関数の計算に用いる地球モデルはPREMとした[上垣内, 2015, 私信].歪テンソル6成分から断層面上のΔCFF(摩擦係数は0.4とした)を算出し,イベント発生時刻の位相を決定した.イベント50個ずつを単位とし,1イベントずつずらしてp値の時間変化を算出した.結果は以下の通りである.
A. 1982年12月本震前に徐々に低下し本震後に増加
B. 2009年3月本震前に徐々に低下し(ただし,最小で0.1),本震後に増加
C. p値が0.05以下となった時期は全部で5回(1982年12月,1988年1月,1993年6月,1998年4月,2000年8月)あるが,1982年12月を以外の4回については,対応する大きめの地震(Mw7.0以上)はない.
p値の時間変化については,2004年スマトラ沖地震Mw9.0(とその最大余震Mw8.6)や2011年東北地方太平洋沖地震Mw9.0の前に低下し,その後増加するという傾向がみられることから[Tanaka, et al., 2010, 2012, GRL],地震予測に有効なツールとなると期待されている.しかしながら,p値を用いた予測を行う際は上記Cのように空振りとなることも考慮して慎重に行う必要がある.