15:45 〜 16:00
[SGC51-03] 北部ケニアリフト，パカ火山のAr/Ar年代測定による活動分析
キーワード：ケニアリフト, アルゴンアルゴン年代測定, 第四紀火山岩, テクトニクス, 全岩化学組成
北部ケニアリフトは，大陸地溝系における若い火山性かつテクトニックな活動の最も顕著な一例である。しかしながら，異なる時代の溶岩流や，関連する火口や断層についての限られた年代情報から，リフト内におけるそのような活動について正確に評価することは困難である。今回，北部ケニアリフトに位置し，複合カルデラ盾状火山であるパカ火山を構成する溶岩流の30個の40Ar/39Ar年代測定結果を得たので報告する。
パカ火山はリフトの底面から比高650mの山体であり，trachyte, mugearite, basaltからなる溶岩流や火砕物で280km2が被われている(Dunkley et al., 1993)。 Dunkley et al. (1993)は，４試料の40Ar/39Ar年代測定から，少なくとも0.4 Ma, 0.2 Ma, 10 kaに火山活動があったとしている。新鮮な山頂火口の地形とそれに伴うリフト伸張方向に沿う断層群の関係は，パカ火山における火山性かつテクトニックな活動が，リフト内で，特に最も年代の若い部分の変形過程に関連している可能性を示している。このような火山の噴火と断層系生成時期を知ることは，北部ケニアリフトの軸に沿うテクトニック及び火山性の活動の正確な評価のためにきわめて重要である。
今回，ポツダム大学での40Ar/39Ar年代測定のために，溶岩流から主に32試料が採取された。試料の採集は Dunkley et al. (1993)の地質図とパカ火山及び周辺の溶岩地形を考慮し，各溶岩流から得られた。各岩石から石基を濃集した物を酸処理した後，オレゴン大学TRIGA原子炉のCLICIT施設で4時間速中性子照射した試料を，ポツダム大学で40Ar/39Ar年代測定を行った。CO2レーザーを用いた段階加熱の結果を年代スペクトラムとアイソクロンから十分に検討し，ほとんどの場合で精度の良い年代値が得られ，かつDunkleyの年代値ともよく一致した。
マイナス年代を示した2試料を除いてトータルで30個の年代が得られた。それらは過去0.6 Maの間火山活動が続き，かつ特に3時期；(I) 0.428から0.372 Ma, (II) 0.160から0.126 Ma, そして(III) 0.039から0.012 Maにおいて活動が多かったことを示した(Fig. 1)。この3時期を基にし，全ての岩石をつぎの3時期に分類した；(1) 0.6から0.35 Ma, (2) 0.35から0.1 Ma, そして(3) 0.1から0 Ma。これに従って全岩化学組成と火山活動の空間分布を調べた。最初に Dunkley et alのいくつかの basaltがtrachyteあるいはmugeariteであることが分かった。また層序にも変更を要するところがあった。(1)の時期には trachyteとmugeariteのみが西側のリフト底面と山体の北東側に噴出した一方，それらより若いtrachyteは山体中でN-S方向に沿って噴出した。溶岩流中に形成された多くの正断層は，(1)の時期に含まれる山体の北東方向の古い溶岩流の中にのみ見られた。微量元素比のNb/Zrは，３時期の間で明瞭に異なる元素比を示し，マグマの組成が活動期間中に徐々に変化したことを示唆した。今回の我々の有用な年代データは，フィールドにおける断層系の観察事実ともよく合い，これからの北部ケニアリフト内の構造の発達モデルの構築に貢献することが期待される。
Reference: Dunkley P. M., M. Smith, D. J. Allen and W. G. Darling (1993): International Series, Research Report SC/93/1, 185pp, British Geological Survey
パカ火山はリフトの底面から比高650mの山体であり，trachyte, mugearite, basaltからなる溶岩流や火砕物で280km2が被われている(Dunkley et al., 1993)。 Dunkley et al. (1993)は，４試料の40Ar/39Ar年代測定から，少なくとも0.4 Ma, 0.2 Ma, 10 kaに火山活動があったとしている。新鮮な山頂火口の地形とそれに伴うリフト伸張方向に沿う断層群の関係は，パカ火山における火山性かつテクトニックな活動が，リフト内で，特に最も年代の若い部分の変形過程に関連している可能性を示している。このような火山の噴火と断層系生成時期を知ることは，北部ケニアリフトの軸に沿うテクトニック及び火山性の活動の正確な評価のためにきわめて重要である。
今回，ポツダム大学での40Ar/39Ar年代測定のために，溶岩流から主に32試料が採取された。試料の採集は Dunkley et al. (1993)の地質図とパカ火山及び周辺の溶岩地形を考慮し，各溶岩流から得られた。各岩石から石基を濃集した物を酸処理した後，オレゴン大学TRIGA原子炉のCLICIT施設で4時間速中性子照射した試料を，ポツダム大学で40Ar/39Ar年代測定を行った。CO2レーザーを用いた段階加熱の結果を年代スペクトラムとアイソクロンから十分に検討し，ほとんどの場合で精度の良い年代値が得られ，かつDunkleyの年代値ともよく一致した。
マイナス年代を示した2試料を除いてトータルで30個の年代が得られた。それらは過去0.6 Maの間火山活動が続き，かつ特に3時期；(I) 0.428から0.372 Ma, (II) 0.160から0.126 Ma, そして(III) 0.039から0.012 Maにおいて活動が多かったことを示した(Fig. 1)。この3時期を基にし，全ての岩石をつぎの3時期に分類した；(1) 0.6から0.35 Ma, (2) 0.35から0.1 Ma, そして(3) 0.1から0 Ma。これに従って全岩化学組成と火山活動の空間分布を調べた。最初に Dunkley et alのいくつかの basaltがtrachyteあるいはmugeariteであることが分かった。また層序にも変更を要するところがあった。(1)の時期には trachyteとmugeariteのみが西側のリフト底面と山体の北東側に噴出した一方，それらより若いtrachyteは山体中でN-S方向に沿って噴出した。溶岩流中に形成された多くの正断層は，(1)の時期に含まれる山体の北東方向の古い溶岩流の中にのみ見られた。微量元素比のNb/Zrは，３時期の間で明瞭に異なる元素比を示し，マグマの組成が活動期間中に徐々に変化したことを示唆した。今回の我々の有用な年代データは，フィールドにおける断層系の観察事実ともよく合い，これからの北部ケニアリフト内の構造の発達モデルの構築に貢献することが期待される。
Reference: Dunkley P. M., M. Smith, D. J. Allen and W. G. Darling (1993): International Series, Research Report SC/93/1, 185pp, British Geological Survey