日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21] 惑星科学

2015年5月25日(月) 09:00 〜 10:45 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)

10:30 〜 10:33

[PPS21-P11] 地球型惑星大気における1次元雲形成モデルとその定常解

ポスター講演3分口頭発表枠

*大野 和正1奥住 聡2 (1.東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻、2.東京工業大学大学院理工学研究科)

近年の系外惑星の透過スペクトル観測において、分子の吸収線が表れない平坦なスペクトルを持つものが見つかっている。平坦なスペクトルが表れる理由として2つの可能性が示唆されている。1つ目は系外惑星が平均分子量の高い大気を持っている場合である。この場合、大気が低高度に集中することで薄い大気となり、それによって吸収線が表れない。2つ目に大気に光学的に厚い雲が存在する場合、雲が中心星からの輻射を遮ってしまうため、吸収線が表れない。現在の観測では、平坦なスペクトルが上述のいずれの現象によるものなのか判断することが困難である。そのため、系外惑星に光学的に厚い雲が形成されるかを、理論的な雲モデルを用いて推定することは重要となる。
 先行の系外惑星雲モデルにZsom et al.2012というものがある。このモデルは凝縮過程の微物理を考慮する一方、雲の頂点 (雲頂) の位置と雨粒によって掃き集められる雲粒の割合は不定パラメーターとしている。しかし、先行のモデルには問題点があり、雲の光学特性がこれらの不定パラメーターに大きく依存してしまっている。
 本研究は雲粒の凝縮過程だけでなく、雲粒・雨粒の衝突過程まで考慮に入れた1次元雲形成モデルを作成することを目的とする。そこで雨粒と雲粒の衝突過程を物理的に考慮するため、雲粒と雨粒の進化を同時に計算するモデルを作成した。我々のモデルでは、上昇気流速度という物理パラメーターが新しく導入される一方で、雲頂の位置と雨粒の掃き集め効率は自動的に決定される。\\
 作成したモデルを地球に適用することで次の結果が得られた。上昇気流速度が0.1m/s以下となる穏やかな大気では、光学的に薄い雲が形成される可能性がある。この結果は上昇気流が弱いほど雲頂が低くなり、雲量が減少することに起因している。また、地表の雲凝結核の数密度が10cm-3以下の条件でも、光学的に薄い雲が形成される可能性があることが分かった。これは凝縮のみを考えた場合と比較して、雲粒の個数が衝突過程によって減少したこと、特に雨粒によって雲粒の70%程度が取り除かれたことに起因している。これらの光学的に薄い雲が形成されうるという結果は、雲頂の位置と衝突過程を考慮することで新たに得られるようになった結果である。
 本研究によって、環境条件に対する定常な雲の分布、光学特性を求めるモデルが作成された。今後は本研究で作成したモデルを応用して、系外惑星の雲が観測スペクトルへ与える影響を推定することが課題である。