日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-07] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2015年5月28日(木) 11:00 〜 12:45 103 (1F)

コンビーナ:*田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、座長:田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)

11:00 〜 11:30

[U07-07] 気象庁の防災業務を支える科学技術の方向性について

*永田 雅1 (1.気象研究所)

キーワード:気象庁, 防災業務, 科学技術

気象庁は科学技術に立脚し、台風や集中豪雨、地震・津波・火山、気候変動の監視・予測等の業務を遂行している。このような自然現象を監視・予測するため、常に最新の科学技術の成果を導入し、防災気象情報の高度化に努めている。
一方で、近年では平成23年東北地方太平洋沖地震や平成23年台風第12号に伴う紀伊半島の豪雨、平成26年御嶽山噴火など、長らく経験しなかった災害に相次いで見舞われている。このような甚大な自然災害から明らかになった改善すべき課題として、災害から人命を守るためには、監視・予測の精度のみではなく、避難行動に結びつくよう適切に情報を伝え利用する仕組みや、国民一人ひとりが自らの判断で防災行動とるための姿勢や意識、情報リテラシーがあげられている。このことから、気象庁は技術開発やそれに基づく情報の高度化とともに、さまざまな組織と連携して防災情報の利活用に関する普及啓発の取り組み推進している。
 このように、命を守るための防災・減災において、防災機関の担当者や住民がとる防災行動に資する情報を目指して改善を進めることが重要であり、それを支える科学技術においても、自然科学として単に監視・予測技術を精緻化するだけではなく、不確実性を含む予測情報について、社会の中での実際の情報の利用方法などの社会科学的な側面なども考慮する必要がある。
 本セッションにおいては、社会的な要望をふまえた効果的な防災・減災を目指す最近の気象庁の取り組みを紹介するとともに、それを技術面から支えるために必要な技術開発及び、基盤的な研究課題の意義について述べる。特に、気象庁として現在の喫緊の課題として技術開発を強化している以下の事項について、現状と今後の方向性について紹介する。

(1)急に発生・発達する積乱雲に伴う局地的大雨や竜巻に対する監視・予測に資する技術開発
(2)バックビルディング形成による線状降水帯や夜間の集中豪雨を高い精度で予測する、 数値予報技術の高度化・精度の改善
(3)5日程度先までの台風の進路、強度予測の高度化
(4)今後発生が想定される南海トラフ巨大地震等の海溝型巨大地震における津波警報等の的確な発表に繋がる技術開発
(5)火山噴火に関して、水蒸気噴火の早期検知等による噴火警戒レベル2や3の迅速な発表およびマグマ噴火の推移を把握することによる噴火警戒レベル4や5の的確な発表に資する研究

これらの技術開発のうち、主要な中期的課題については気象庁の業務を支える研究として、大学や関係機関と連携しながら気象研究所が中心となって実施してきているが、本セッションにおいて社会的意義・役割を改めて共有し、各学会に所属する研究者や専門家とともに連携を一層強めて問題解決に取り組んでいけるよう研究の方向性に関して議論を促進する。