日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS25] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2015年5月28日(木) 11:00 〜 11:45 101A (1F)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)、座長:齋藤 仁(関東学院大学 経済学部)

11:15 〜 11:30

[HDS25-09] 広島大規模土砂災害~沖積錐の都市化と被災の関係

*小林 浩1三浦 博之1秋山 幸秀1渋谷 研一1長野 英次1 (1.朝日航洋株式会社)

キーワード:土石流, 沖積錐, 都市化, 災害リスク

平成26年8月20日未明に発生した広島市における大規模土砂災害では、平野部に近接する急峻な山地から同時多発的に多数の土石流が発生し、主に太田川下流部の谷沿いに面した山麓を縁取るように形成された緩斜面上の住宅地に氾濫して、大きな被害をもたらした。
広島地方は平地が少なく、中国地方特有の定高性のある山地が広がっている。平地には比高300m~700mの急峻な山地が近接しており、山地から流下する数多くの谷の出口には傾斜が3°~20°の緩斜面が形成されている。平地に乏しい広島郊外では、この緩斜面上が住宅用地として盛んに開発されつつある。
しかし、災害後に航空機搭載型レーザプロファイラによって作成した精密な地形モデルによれば、緩斜面の多くは段丘の発達がほとんどみられない極めて新鮮な堆積面から形成されている、沖積錐であることが明らかとなった。このことは、緩斜面上は現在も堆積作用が継続する場であり、土石流の流下及び堆積が頻繁に発生していることを示唆する。事実、砂防学会が作成した今回の災害での土石流の流下・堆積範囲は、おおむね傾斜が3°~20°の範囲に重なり、また犠牲者の発生した場所の多くは、谷出口に近い傾斜7°以上の緩斜面上であった。また、土石流の流下区間の平均勾配が10°以上、土石流堆積区間が3°以上とされることとも整合する。
広島地区においては、過去にも、平成11年6月29日に発生した大規模土砂災害などで、同様の地形場に開発された住宅地において大きな被害を受けている。そこで、基盤地図情報数値地形モデルを用いて、広島市周辺の傾斜が3°以上20°未満の領域を抽出した。その結果、市内の広範囲にわたって、沖積錐上や造成により形成された緩斜面上に、傾斜が3°以上10°未満、10°以上15°未満、15°以上の領域を抽出することができた。これらの領域に人口集中区域を重ねたところ、広島市郊外には土石流流下区間・土石流堆積区間に相当する傾斜を有する斜面上に、広く開発が進んでいることが改めて確認された。