日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT23] 地球史解読:冥王代から現代まで

2015年5月25日(月) 09:00 〜 10:45 104 (1F)

コンビーナ:*小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域)、座長:青木 翔吾(東京大学大学院総合文化研究科)

09:15 〜 09:30

[BPT23-02] 後期重爆撃による冥王代大陸の溶融と環境への影響

*芝池 諭人1佐々木 貴教2井田 茂3 (1.東京工業大学理工学研究科地球惑星科学専攻、2.東京工業大学地球生命研究所、3.京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室)

キーワード:後期重爆撃, 冥王代, 小惑星, 天体衝突, 生命の起源, 大陸地殻

冥王代は生命が誕生した時代であり、冥王代の環境の理解は重要である。当時の岩体は地球上に残っていないが、大陸地殻が存在していたことを示すジルコン結晶が見つかっている。そのため、冥王代に大陸は存在したが、その後何らかのプロセスで消失したと考えられている。この消失プロセスの仮説として、冥王代終盤の小天体衝突の集中、後期重爆撃(LHB)が挙げられる。LHBは冥王代の環境に影響したに違いない。
 この研究では、この仮説を定量的かつ体系的に確かめ、LHBによって全ての冥王代大陸を消失する可能性が少ないと示した。我々は衝突天体のサイズ分布(SFD)を累乗近似し、そのべき指数αをパラメーターとして与えた。さらに、LHBが近くに与える影響を半解析的に表現した。そして、LHBによって破壊あるいは溶融される総体積および総面積を、月面の二種類の独立な痕跡である、LHB中に衝突した最大の質量および20km以上のクレーターの数密度曲線から求めた。その結果、α<1.5であれば、LHBが全ての大陸地殻を溶融する可能性があるとがわかった。しかし、α=1.61、つまり月のどちらの痕跡も満たすαのときは、LHBにより地球表面の半分しか溶融しないとわかった。なお、この推定は地殻の下から溶融物が溢れ出る現象も考慮している。これは、衝突天体の直径が100km以上の時に起こると考えられている。また一方で、LHB以前の衝突を加味すれば、より多くの地表が溶融物で覆われる。
 この溢れ出る溶融物は、マグマオーシャンのように地殻とマントルの混合物から成り、数多くのマグマプール、つまり局所的なマグマオーシャンを形成するだろう。このようなマグマプールでは、KREEPのようなものが地表にできると考えられ、これが生命の誕生に必要なカリウムとリンの供給源となるかもしれない。この発表では、このように冥王代環境に天体衝突が与える影響を議論する。