日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS25] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2015年5月27日(水) 12:00 〜 12:45 101A (1F)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)、座長:飯田 智之(防災科学技術研究所)、小林 浩(朝日航洋株式会社 計測コンサルタント部)

12:36 〜 12:39

[HDS25-P15] 震源断層との位置関係および地質の違いに着目した地震による斜面崩壊の規模と地形要素の関係についての分析

ポスター講演3分口頭発表枠

*田中 健貴1内田 太郎1蒲原 潤一1渡部 真2尾崎 順一2工藤 司2 (1.国土技術政策総合研究所、2.砂防エンジニアリング株式会社)

キーワード:地震による斜面崩壊, 岩手・宮城内陸地震

深層崩壊は通常の土砂災害に比べ発生頻度は低いが非常に規模が大きく、被害も甚大になる場合がある。深層崩壊への効果的な対策を行うためにはその発生箇所を予測することが求められる。豪雨による深層崩壊について田村ら(2009)は既往研究を参考に深層崩壊に対する斜面の安全率について評価する式を提案した。この中で勾配、起伏量が斜面の不安定化に重大な影響を及ぼすことを指摘している。一方で地震により発生する斜面崩壊について内田ら(2004)は兵庫県南部地震により六甲山地で発生した斜面崩壊を対象に地形量や地震動を考慮した危険度を評価する式を提案し、比較的規模の小さい崩壊について明瞭に危険度を表現できることを示した。さらに武澤ら(2013)は”斜面の大きさ”を起伏量を用いて表現し、起伏量と崩壊地面積率の関係を検討した結果、起伏量の増大にともない崩壊発生割合が増加する傾向があることを示した。また三森ら(2012)は地震による深層崩壊が多発した平成20年岩手・宮城内陸地震で斜面崩壊について震源断層からの距離や断層との位置関係および地質、地形について分析を行い、地形のみならず地質および震源断層からの距離が崩壊発生に影響を与えていることを示した。これら既往の研究から地震により発生する深層崩壊を含む斜面崩壊は、地質の違いや震源断層からの距離、地形など多岐にわたる要素が崩壊発生に大きく影響を与える可能性があることが考えられる。しかし、地質、震源断層との位置関係、地形が地震による崩壊の規模や密度に及ぼす影響は十分に検討されているとは言い難く、特に深層崩壊と規模の小さい表層崩壊で発生しやすい地形や震源断層との位置関係が異なるかどうか解明されていない。
 本研究では地質および震源断層からの距離等によって対象地域を領域に分割し、分割した領域ごとに地震により発生する斜面崩壊について崩壊地の密度、面積率および面積、勾配、起伏量を算出した。これにより地震による斜面崩壊について地質や震源断層からの距離等の地震による影響を考慮しつつ、斜面崩壊の発生および規模に関する面積、勾配、起伏量の検討を行うことが可能となると考えられる。
 地震による斜面崩壊が多発した岩手・宮城内陸地震を対象とした。震源断層から1kmごとに区切るとともに、震源断層の上盤側、下盤側で分け、領域を分割した。その上で地質より第四紀堆積岩、第四紀火山岩、第三紀堆積岩、第三紀火山岩、第三紀深成岩・変成岩、中・古生代堆積岩、中・古生代付加体火成岩、中・古生代深成岩・変成岩の8種類に領域を分割した。各崩壊地の面積、起伏量、勾配は崩壊地のポリゴンデータおよび国土地理院発行の5mDEMを用いた。その結果、震源断層の上盤側で震源断層からの距離が1~10㎞以内の領域において、崩壊密度が特に高いことが分かった。