日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] 成層圏・対流圏過程とその気候への影響

2016年5月23日(月) 10:45 〜 12:15 A01 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*山下 陽介(国立環境研究所)、秋吉 英治(国立環境研究所)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、冨川 喜弘(国立極地研究所)、座長:冨川 喜弘(国立極地研究所)

11:00 〜 11:15

[AAS11-02] 南極大型大気レーダーPANSYで観測された下部対流圏鉛直風擾乱の解析

*南原 優一1佐藤 薫1堤 雅基2高麗 正史1 (1.東京大学 理学系研究科 地球惑星科学専攻、2.国立極地研究所)

キーワード:大型大気レーダー、極域大気

昭和基地 (39.59°E, 69.0°S) に設置されたPANSYレーダーは、2011年3月に初観測に成功した後、現在に至るまで連続観測を続けている。PANSYレーダーは鉛直風を含む3次元風速の鉛直プロファイルを高精度高分解能に観測することが可能である。本研究ではPANSYレーダーによる2012年7月から2015年6月までの3年間の長期連続観測データを用いて、南極域の下部対流圏の鉛直風と運動量鉛直フラックスの特徴について統計的な解析を行った。まず、周期約30日から8分までの広い帯域に亘る周波数スペクトルを求めた (図)。スペクトルは周波数のべき乗に比例する関係をしており、3つの周波数領域でその関係は異なることが分かった。また、周波数のべき指数が切り替わる周波数は、水平風と鉛直風で異なることも分かった。次に、運動量鉛直フラックス、鉛直風のバリアンスを周期1日から2時間の長周期成分と、周期2時間から8分の短周期成分とに分けて解析をしたところ、運動量鉛直フラックスは長周期成分が、鉛直風のバリアンスは短周期成分がより大きいという結果が得られた。
さらに、下部対流圏の鉛直風擾乱を詳しく解析したところ、南北にリッジを持つ地形に強制された地形性の重力波である可能性が極めて高いことが分かった。その根拠は主に以下の3つの観測事実である。1つ目は、地表付近の東西風が強いときに、強い鉛直風擾乱が下部対流圏で観測されることである。2つ目は、鉛直風擾乱の上限が、地形性重力波のクリティカルレベルと対応する東西風が0 ms-1 となる高度と一致していることである。3つ目は、鉛直風擾乱が活発な時の周波数スペクトルはクリティカルレベルより上で、広い周波数帯に亘り不連続的に小さくなっていることである。この特徴は背景風の変化に伴う山岳波の位相変調で説明ができる。