日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS12] 大気化学

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 303 (3F)

コンビーナ:*入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(東京理科大学 理学部第一部)、座長:須藤 健悟(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻)

13:45 〜 14:00

[AAS12-01] 東アジアにおける下部対流圏オゾンの衛星観測とモデルシミュレーションの比較

*林田 佐智子1出牛 真2梶野 瑞王2山地 一代3関山 剛2眞木 貴史2 (1.奈良女子大学理学部、2.気象研究所、3.神戸大学海事学研究科)

キーワード:オゾン、衛星、モデルシミュレーション、汚染

OMI(Ozone Monitoring Instrument)の紫外線スペクトル観測からオゾン鉛直プロファイルをリトリーバルした結果 (Liu et al., 2010)を使って、Hayashida et al.(2015)は中国中東部の下部対流圏オゾン増大現象を報告した。しかしながら、オゾン鉛直分布の導出には平滑化誤差が極めて大きいことから、対流圏最下層のオゾンを衛星観測から明らかにするためには、上部対流圏/下部成層圏(UT/LS)におけるオゾン変動の影響に十分注意する必要がある。本研究ではUT/LSのオゾン増大が下部対流圏に与えるみかけの影響を除去するための手法を開発した。開発したスクリーニング手法を用いて下部対流圏オゾンに対するみかけの影響を取り除いた後においても、2006年6月には中国中東部においてオゾンの増大現象を明確に示すことができ、Hayashida et al. (2015)の結果を確認できた。6月におけるオゾン増大現象の理由を明らかにするために、気象研究所で開発された化学気候モデルMRI-CCM2(Deushi and Shibata, 2011)によるシミュレーションとの比較を行った。シミュレーションの結果はOMIで観測された6月のオゾン増大現象をよく再現しており、その原因は工業活動や自動車など人為起源のオゾン前駆物質放出と紫外線環境でほぼ説明できることが示された。さらにYamaji et al. (2010)のエミッション推定値を使って、冬小麦の収穫後の畑の残渣焼却の影響についても調べたところ、OMIのもつ鉛直分解能程度ではその影響はあまり大きく検知されず、たかだか1DU程度と推定された。
謝辞
本研究はハーバード大学Xiong Liu博士との共同研究です。本研究は文部科学省GRENE-ei プログラム炭素循環課題(代表:今須良一博士)の支援を受けて実施した成果の報告を含みます。茅場聡子さんと小野朗子さんの貢献に感謝します.