日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS12] 大気化学

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 303 (3F)

コンビーナ:*入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(東京理科大学 理学部第一部)、座長:須藤 健悟(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻)

14:30 〜 14:45

[AAS12-04] 中国域におけるエアロゾルの収支解析:濃度と流出量の経年変動

*山下 剛史1須藤 健悟1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:エアロゾル、長距離輸送、ブラックカーボン、中国

汚染域から排出されるエアロゾルやその前駆気体は、周辺領域だけでなく、風によって輸送されることにより、下流のリモートな領域の気候や大気環境にも大きな影響を及ぼす。したがって、汚染物質の気候・環境影響を検討するためには、汚染域での濃度変動に加えて、域外への流出量の変動にも着目する必要がある。本研究では、黒色炭素BCと硫黄酸化物SOx (SO2+SO42-) に着目し、化学気候モデルCHASERを用いたエアロゾル収支解析により、中国域(18°N―46°N, 104°E―123°E)のエアロゾル濃度変化や域外への流出量変化の要因を評価した。この結果、中国域外へのエアロゾル流出量は冬季に最大となる季節性を示し、中国域の東面からの流出量および西面からの流入量はともに3月頃にピークとなることがわかった。また、中国域からの流出量の経年変動には東西面を通じた正味流出量の変化が大きく寄与していることが示された。中国域内におけるエアロゾル濃度の年々変動は、流出量の年々変動に大きく支配されており、域内の沈着量の寄与は比較的小さいことが確認された。また、正の放射強制力を持ち、気候への影響が大きいとされるBCを対象としたエミッション感度実験により、中国域におけるBCの対流圏カラム量には、ローカル (中国域) 起源、インド起源が、それぞれ75%および12%寄与していることが推定された。中国域西面からのBC流入量のうち約半分はインド起源であり、中国域東面からのBC流出量のうち約6割が中国起源、約2割がインド起源であった。以上のことより、インドなどの南アジアにおけるBCの収支変化が、中国域のBC濃度変化に影響を与えている可能性が示唆され、一部はさらに長距離輸送され、日本や北太平洋にも寄与している可能性がある。