日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS12] 大気化学

2016年5月26日(木) 09:00 〜 10:30 303 (3F)

コンビーナ:*入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(東京理科大学 理学部第一部)、座長:金谷 有剛(国立研究開発法人海洋研究開発機構地球表層物質循環研究分野)、松井 仁志(名古屋大学大学院環境学研究科)

09:30 〜 09:45

[AAS12-15] ブラックカーボン粒子の湿性除去過程の観測的研究

*森 樹大1大畑 祥1茂木 信宏1小池 真1近藤 豊2 (1.東京大学大学院理学研究科、2.国立極地研究所)

キーワード:ブラックカーボン、湿性除去

ブラックカーボン(BC)は、太陽光を吸収し大気を加熱するエアロゾルである。BCの放射強制力推定の不確実性を減らすためには、BCの空間分布の支配要因の一つである湿性除去過程を観測的に理解することが重要である。この除去過程には、BC含有粒子が雲凝結核(CCN)として作用し、雲粒を介して除去されるnucleation scavenging と落下する雨滴との衝突により除去されるimpaction scavenging がある。理論的には両者の除去効率が粒径に強く依存することが知られているが、その相対的な寄与率はこれまで観測的に検証されていない。そこで本研究では、局地的な対流性の雲に伴う夏季(2014, 2015年7 ~ 8月 東京)の降水イベントにおいて、大気と降水中のBC粒径別数濃度の同時観測を行い、両者の比率で表されるBC除去効率の粒径依存性が大気中のBCのCCN特性の粒径依存性で説明可能かどうかを調べた。BCのCCN特性は、大気中のBC含有粒子の被覆の厚さと吸湿特性を観測することにより推定した。全32回のうち29回の降水イベントにおいて、観測された除去効率の粒径依存性はCCN特性の粒径依存性で説明可能であった。これは、BCの主要な除去過程がnucleation scavenging であることを示している。残りの降水イベントでは、大粒径のBCの除去効率がCCN特性のみでは説明できず、impaction scavengingの寄与も含むと考えられる。