日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS12] 大気化学

2016年5月26日(木) 10:45 〜 12:15 303 (3F)

コンビーナ:*入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(東京理科大学 理学部第一部)、座長:金谷 有剛(国立研究開発法人海洋研究開発機構地球表層物質循環研究分野)、梅澤 拓(独立行政法人国立環境研究所)

10:45 〜 11:00

[AAS12-19] 太平洋とその縁辺海で得られた海洋性エアロゾルの個別粒子分析

*吉末 百花1岩本 洋子1足立 光司2加藤 俊吾3三浦 和彦1植松 光夫4 (1.東京理科大学理学部第一部物理学科、2.気象研究所、3.首都大学東京都市環境学部、4.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:海洋大気エアロゾル、海塩、硫酸塩、火山、硫化ジメチル、メタンスルホン酸

海洋表面の波しぶきから発生した海塩粒子は、大気中の硫酸、硝酸、メタンスルホン酸(MSA)などの酸性物質と反応して変質する。これらの酸性物質として、人為起源、海洋生物起源の硫化ジメチル(DMS)、火山起源のものが存在する。海塩粒子と反応した酸性物質は海塩粒子に取り込まれ海洋に沈着するため、大気中の寿命が短くなり雲核となりにくい。従って、海塩粒子が豊富に存在する環境では、雲による地球の冷却効果は予想よりも小さいと考えられる。本研究では、南北太平洋で捕集したエアロゾル粒子について個別粒子分析を行い、海塩粒子の変質度合の海域による違いを明らかにした。また、変質の原因となる酸性物質の起源を考察した。
試料採取は、学術研究船白鳳丸KH-13-7 航海(2013/12/11~2014/2/12)とKH-14-3 Leg2 航海(2014/7/17~8/11)において行った。捕集した個々のエアロゾル粒子について、透過型電子顕微鏡を用いた形態観察と、エネルギー分散型X線分析器を用いた元素分析を行った。
ほとんどの海域において、変質していない海塩粒子が分析対象粒子のうち80%以上を占めるものの、グアム島近海で得られたサンプルは硫酸塩が85%以上を占めていた。グアム島近海では、アジア大陸を経由した気塊が到達していることや、ラドン濃度や粒子数濃度も高いことから、大陸由来の汚染気塊の影響があったと考えられる。また、アリューシャン列島近海で得られたサンプルには硫酸塩と変質海塩が多く含まれていた。Na、Cl、Sの相対重量比をプロットした三角ダイヤグラムより、海塩粒子は硫酸もしくはDMSの酸化によって生成されるMSAによる変質を受けていたことが分かった。また、この硫酸の起源は、生物起源の他にカムチャッカ半島から輸送された火山起源物質の可能性が示唆された。