日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS12] 大気化学

2016年5月26日(木) 10:45 〜 12:15 303 (3F)

コンビーナ:*入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(東京理科大学 理学部第一部)、座長:金谷 有剛(国立研究開発法人海洋研究開発機構地球表層物質循環研究分野)、梅澤 拓(独立行政法人国立環境研究所)

11:15 〜 11:30

[AAS12-21] 二次元ビン法を用いた全球エアロゾルモデルの開発

*松井 仁志1,2,3大島 長4 (1.名古屋大学、2.コーネル大学、3.海洋研究開発機構、4.気象研究所)

キーワード:エアロゾル、全球エアロゾルモデル、2次元ビンモデル、数濃度、粒径分布、混合状態

エアロゾルの放射や雲・降水過程を介した気候影響評価の不確定性幅は依然として非常に大きく、気候変動予測において大きな不確定要因の1つとなっている。エアロゾルの気候影響を精度良く推定するためには、エアロゾルの質量濃度だけではなく、従来のモデルでは十分に表現されてこなかった数濃度・粒径分布や個々の粒子の化学組成(混合状態)といった情報も必要になる。これまでの我々の研究では、これらの情報を直接表現できる2次元ビン法を用いたエアロゾルモデルATRAS (Aerosol Two-dimensional bin module for foRmation and Aging Simulation) を開発し、領域3次元モデルWRF-chem (Weather Research and Forecasting model with chemistry) への導入・検証・適用を行ってきた。そして、これまでのモデルでは十分に推定できなかったエアロゾルの微物理・化学特性の様々なパラメータを計算することで、このような詳細なエアロゾルモデルの重要性・必要性を示してきた [Matsui et al., 2014; Matsui, 2016a, 2016b]。本研究では、この2次元ビン法を用いたエアロゾルモデルを大幅に改良し、全球気候モデルCAM5 (Community Atmospheric Model version 5) への導入・計算・検証を行った。
2次元ビン表現を用いた全球エアロゾルモデルの開発にあたっては、モデルの計算コストという観点が非常に重要になる。領域モデルでは限られた領域(例えば東アジア域)について短期間(数週間~数年程度)の計算を行う一方、全球モデルでは地球全体について長期間(数年~数千年程度)の計算が必要になる。そこで、ATRASモデルの精度を維持しつつ表現を簡略化した新たなボックスモデルの開発を行った。エアロゾルの微物理・化学過程に関する全てのプロセスのソースコードを全面的に見直すとともに、2次元ビン表現で必要となるエアロゾルの変数の数を減らすことで計算コストを大幅に削減した。これらの変更によって、エアロゾルの数濃度・粒径分布・混合状態の計算精度を維持しつつ、領域モデルで使用しているATRASモデルに比べてエアロゾルプロセスの計算コストが1/10程度となるボックスモデルを開発した。
このボックスモデルを全球モデルCAM5へ導入し、5年間のテスト計算を行った。CAM5に導入されている既存のエアロゾルモデルMAM (Modal Aerosol Module) との比較やエアロゾル観測との比較を行い、導入したエアロゾルモデルが概ね良好なパフォーマンスを示すことを確認した。また、詳細なエアロゾルモデルを用いることによって初めて表現できるエアロゾルのパラメータを計算し、その空間分布などを調べた。
発表では、ボックスモデルの概要・結果を示すとともに、全球エアロゾルモデル計算についてMAMや観測との比較、感度実験の結果などを紹介したい。
参考文献:
Matsui, H. et al. (2014), Atmos. Chem. Phys., 14, 10315-10331.
Matsui, H. (2016a), J. Geophys. Res. Atmos., 121, doi:10.1002/2015JD023998.
Matsui, H. (2016b), J. Geophys. Res. Atmos., 121, doi:10.1002/2015JD023999.