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[AAS12-P11] MAX-DOASによって観測された九州の二酸化硫黄濃度の要因解析
キーワード:二酸化硫黄、MAX-DOAS、火山
代表的な大気汚染物質のひとつである二酸化硫黄(SO2)は、酸性雨やエアロゾル(近年問題になっているPM2.5を含む)の重要な前駆気体としての役割を通じて、人体や生態系、気象などに影響を及ぼすため、その濃度変動要因を解明することは重要である。SO2の観測はこれまでは主に地表濃度に焦点が当てられ、エアロゾルの予測モデルへのデータ同化等の応用研究に利用する上では空間代表性に留意する必要があった。そのような中、本研究では、アジア大陸からの長距離輸送や火山ガスなど様々な影響を受けることが考えられる九州地方(福岡県春日市)で多軸差分吸収分光法(Multi-Axis Differential Optical Absorption Spectroscopy : MAX-DOAS)と呼ぶ地上リモートセンシング手法による連続観測を行った。波長域310-320 nmの測定スペクトルをDOAS法で解析し、高度0-1 km層内のSO2平均濃度を水平スケール10 km程度で導出した。2014年7-8月の期間で連続的な観測ができている日において、SO2濃度が5 ppbvを超える日を7日間特定できた。これらの日を対象にバックトラジェクトリー解析を行ったところ、火山起源と大陸起源の2つのケースに分類できることが分かった。火山起源については、桜島付近を通過した空気塊が7月8日に、阿蘇山を通過した空気塊が7月30日、8月7日および8月13日に観測地点に到達したことが分かった。特に阿蘇山の影響を受けていると考えられる3日間はいずれも10 ppbvを超える値を示していた。これらのケースに加え、8月14日の高濃度ケースについては影響を及ぼした火山を特定することは難しかったが、九州南部の火山の影響を示唆した。他方、7月12日と21日は両日とも火山の影響は受けていなかった。7月12日は中国からの長距離輸送の影響が示唆された。7月21日はおよそ20 ppbvまで達する濃度上昇が観測されたが、これは韓国南部を通過した空気塊が短期間で春日市まで輸送されたためと考えられた。