日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS12] 大気化学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(東京理科大学 理学部第一部)

17:15 〜 18:30

[AAS12-P14] 異なる大気環境下での新粒子生成: 京都市内と東京多摩丘陵での観測の比較

*車 裕輝1中山 智喜1松見 豊1鶴丸 央2Sathiyamurthi Ramasamy2坂本 陽介2入江 学2井田 明2加藤 俊吾3中嶋 吉弘4松田 和秀4梶井 克純2,5 (1.名古屋大学、2.京都大学、3.首都大学東京、4.東京農工大学、5.国立環境研究所)

キーワード:新粒子生成、エアロゾル粒径分布、二酸化硫黄、揮発性有機化合物

新粒子生成は大気エアロゾル粒子の重要な起源のひとつであり、その後の様々な物理・化学過程を経て地域・全球規模の気候や大気質に重大な影響を及ぼす。そのため新粒子生成の詳細なメカニズムを理解することは重要であり、都市域・森林・山岳での観測研究および室内実験研究が広く行われているが、依然として核生成とその後の粒子成長に関して未解明な部分が大きい。本研究では夏季に京都市内と東京多摩丘陵でエアロゾルの粒径分布測定を行うとともに、粒子生成に寄与しうる気相成分濃度の同時観測を行い新粒子生成発生の決定要因について検討した。
京都での観測は 2013 年 8 月 19 日から 9 月 11 日に京都市京都大学吉田キャンパスで行った。東京での観測は 2015 年 7 月 24 日から 8 月 8 日に八王子市東京農工大学フィールドミュージアム多摩丘陵で行った。エアロゾル粒径分布の測定には走査型移動度粒径測定器 (SMPS; TSI) を用いた。揮発性有機化合物 (VOC) 濃度の測定には陽子移動反応質量分析計 (PTR-MS; IONICON) を用いた。SO2 や O3 などの気相成分の同時測定も行った。また本研究での新粒子生成イベントの判定条件は Dal Maso ら1) の方法を参考に、新たな核生成モード (<30 nm) が出現後、そのモードが継続した場合を新粒子生成イベントとした。この新粒子イベントを粒径が時間とともに増大した場合と増大しなかった場合の 2 つに分類した。
京都観測では 23 日間の観測期間中少なくとも 7 日間で、SO2, VOC 濃度の増加に対応した新粒子生成イベントが発生した。一方で東京多摩観測では 16 日間の観測期間中では新粒子生成イベントは発生しなかった。両観測の間には全粒子表面積と SO2 濃度に大きな差は無かったのに対し、東京多摩観測では VOC 濃度のうち、新粒子生成が発生しやすい昼間においてイソプレン濃度はモノテルペン濃度よりも非常に大きかった。本発表では新粒子生成イベント発生時と発生しなかった時のエアロゾル粒径分布の違いや、各種気相成分濃度の違いについて報告する予定である。
参考文献
1) M. Dal Maso, M. Kulmala, I. Rippinen, R. Wagner, T. Hussein, P. P. Aalto, K. E. J. Lehtinen: Boreal Env. Res., 10, 323 (2005).