日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS13] ミクロスケール気象現象解明にむけた稠密観測・予報の新展開

2016年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 301A (3F)

コンビーナ:*古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、常松 展充(東京都環境科学研究所)、荒木 健太郎(気象研究所)、座長:伊藤 純至(東京大学大気海洋研究所)

09:00 〜 09:15

[AAS13-01] 気象庁非静力学モデルによる肱川あらしの再現

*伊藤 純至1,2黒坂 優3名越 利幸3 (1.気象研究所、2.東京大学大気海洋研究所、3.岩手大学)

キーワード:領域気象モデル、局地風、霧、微細気象

愛媛県大洲市を流れる肱川河口付近では、「肱川あらし」とよばれる、大洲盆地から瀬戸内海へ向かう肱川に沿って、霧を伴って吹き出す局地風が秋・冬季の朝方にしばしばみられる。晴天時の夜間、大洲盆地において蓄積した冷気が、陸風として約10km下流の河口へ向かう。その際、幅数100mの峡谷を通過するが、通過後下流において”hydraulic jump(跳ね水現象)”を生じ、肱川河口付近では地表風が強まったものと考えられている。
本研究では現実地形や雲物理過程が導入された領域気象モデルである気象庁非静力学モデル(JMANHM)の高解像度化により、このような微細気象の再現を試みる。気象庁メソ解析(MANL)を初期値・解析値とし、実際に「肱川あらし」がみられた数事例について、シミュレーションを行った。
ある程度、峡谷や盆地の地形が再現可能な水平解像度400 m、最下層の鉛直解像度40 mとして実験では、河口付近のある程度の強風(10m/s弱)は生じたものの、夜間、盆地において霧が生じなかった。鉛直層数を3倍に増やし、さらにモデルの上端を下げ、最下層の鉛直解像度を10mに精緻化した実験では、夜間にみられる大洲盆地内の放射霧が再現された。霧による長波放射で盆地内の気温が5 K程度下がったため、河口付近の風速も強くなった(約15m/s)。さらに水平解像度を80 mに向上させたところ、河口付近の強風は盆地内で生じた霧を伴う、現実の「肱川あらし」に近い状況を再現できた。
数値実験結果を肱川に沿った断面でみると、”hydraulic jump”が峡谷下流の河口付近で生じていることがわかる。また2015年11月の事例については、上空からの映像や、河口付近に設置した風速計と様々なデータを利用できるため、数値実験結果との比較も行う。
謝辞
本研究の実施にあたってHPCI戦略プログラム分野3「超高精度メソスケール気象予測の実証」の支援を受けました。