日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS13] ミクロスケール気象現象解明にむけた稠密観測・予報の新展開

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、常松 展充(東京都環境科学研究所)、荒木 健太郎(気象研究所)

17:15 〜 18:30

[AAS13-P08] 高密度定点気象観測による京田辺キャンパス周辺の局地気候の調査

*安田 朱里1山根 省三1 (1.同志社大学)

キーワード:高密度観測、局地気候

同志社大学京田辺キャンパスのある京田辺市は,京都府の南西部に位置し,東に淀川水系の木津川,西に甘南備山があり,水田や田畑が広がる自然豊かな人口約6.6万人の都市である.京都や大阪,奈良に接続するJRや私鉄の駅を中心として,その周辺の平野部に市街地が広がっている.京田辺キャンパスは西側の丘陵地帯に位置し,平野部との標高差は約50mである.本研究では,気象観測ロガーシステムKY-logger(NTシステムデザイン)を用いて,時間的・空間的に高密度定点気象観測を行い,京田辺キャンパス周辺で形成される局地気候を調査した.
2015年11月12日~30日に,大学の最寄り駅の近鉄興戸駅を中心とする半径1.4 kmの円内で,14地点にKY-loggerを設置し,気温,相対湿度,気圧を1秒間隔で観測した.その内の1地点では,無電源気象観測ステーションMetpak(Gill社)とKY-loggerの同時観測を行い,Metpakにより得られた観測データを,KY-loggerの観測データの精度検証に用いた.そして,KY-loggerの観測データおよび,大学内で観測された全天赤外放射量,京田辺のアメダスデータを用いて,晴天日の夜間における気温や海面更正気圧の時間変化の,地点による違いを調べた.京田辺のアメダスは,京田辺キャンパスから北北西に約3.4 kmのところに位置している.
同時観測したKY-loggerとMetpakの気温,相対湿度の時間変動の間には,それぞれ,日中で±1℃と±5%RH,夜間で±0.3℃と±3%RHの差があった.同地点で高さを1 m程度変えて観測した2つのKY-loggerの気温と相対湿度は,それぞれ,ほぼ同一の時間変動を示し,その2つの測器の気圧変動の間には,高度差に相当する気圧差が確認された.大学周辺の標高の高い地点では,晴天日の夜間の気温低下が市街地に比べて小さく,海面更正気圧は市街地と比べて約0.2 hPa低くなることが分かった.風が弱く赤外放射量の時間変化が小さい穏やかな晴天日の夜間において,30分の間に0.5~1℃気温が低下する現象が観測された.この急激な気温低下は,標高の低い平野部で先に発生し,その後,標高の低いところから高いところへと順に発生した.
KY-loggerの観測データの精度検証の結果から,今回のような高密度観測が局地気候の調査に有効であることが確認された.