日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS13] ミクロスケール気象現象解明にむけた稠密観測・予報の新展開

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、常松 展充(東京都環境科学研究所)、荒木 健太郎(気象研究所)

17:15 〜 18:30

[AAS13-P09] 水蒸気鉛直分布観測のためのUV-Cラマンライダーに関する研究

*柿原 逸人1矢吹 正教1津田 敏隆1 (1.京都大学生存圏研究所)

キーワード:ラマンライダー、水蒸気

集中豪雨に代表される空間スケールの小さい局地的な大気現象の予報精度の向上のためには、大気境界層の水蒸気プロファイルを高い時空間分解能で計測することが求められる。物質ごとに特有の周波数シフトを示すラマン散乱光を検出するラマンライダーは、水蒸気の時空間変動を捉えるのに適している。ソーラーブラインド領域として知られる紫外線C(UV-C) 領域のレーザーを使用したライダーシステムは、太陽放射の影響が低減できるため日中を含む連続観測が可能であるという利点がある。一方で、オゾンによる吸収を強く受ける波長領域であるため、ラマン散乱信号から水蒸気量を推定するには、対流圏オゾンの影響を補正することが必要となる。本研究では、数値計算を基礎として、オゾン分布の変動など大気環境を考慮したUV-Cラマンライダーによる水蒸気混合比の推定精度について評価し、またその精度に影響する校正手法について検証した。
UV-Cライダーは、波長266 nm のレーザーを用いて、酸素振動ラマン散乱(277.5 nm)、窒素振動ラマン散乱(波長283.6 nm)、水蒸気振動ラマン散乱(波長294.6 nm)の信号を取得するシステムを想定した。このシステムにより検出できる各ラマン散乱信号を、ラジオゾンデ観測の気象要素データを基に推定した空気分子密度と、地上の濃度が0~100 ppbまで変化するオゾンプロファイルを仮定して理論的に生成した。受信光子数の統計誤差を考慮した数値計算では、地表のオゾン濃度を60 ppb、0 ppb としたとき、水蒸気混合比推定の誤差が10% 以内となる計測可能高度は、それぞれ1750 m、2150 m となった。また、ライダー信号から水蒸気混合比に換算するための校正係数の決定について、ラジオゾンデの観測データと推定した水蒸気混合比が一致するように校正係数を決定する方法、および標準光源を使用して各ラマン散乱波長の装置定数を求め校正係数を見積もる方法の、二つの手法に対して評価を行った。地上オゾン濃度60 ppb の条件下では、ラジオゾンデを使用する手法における校正係数の推定誤差はで1.21% となった。一方、標準光源を利用する手法では重水素ランプで1.07%、タングステンランプで6.91%となった。