日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC20] 雪氷学

2016年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 102 (1F)

コンビーナ:*大畑 哲夫(情報システム研究機構・国立極地研究所・国際北極環境研究センター)、堀 雅裕(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)、鈴木 和良(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、杉山 慎(北海道大学低温科学研究所)、座長:堀 雅裕(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)

15:45 〜 16:00

[ACC20-08] 南極ドームふじのでのフィルン層構造の変態: 近赤外光の反射率と他の結晶組織構造や化学特性との関係の発達

*藤田 秀二1,2東 久美子1,2榎本 浩之1,2,3福井 幸太郎1,7平林 幹啓1堀 彰3保科 優4,8飯塚 芳徳5望月 優子6本山 秀明1,2中澤 文男1杉山 慎5スーディク スィルヴィアン1高橋 和也6 (1.大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所、2.総合研究大学院 大学複合科学研究科 極域科学専攻、3.北見工業大学、4.名古屋大学、5.北海道大学低温科学研究所、6.理研、7.現在:立山砂防カルデラ博物館、8.現在:地球環境研究所 地球環境研究センター)

キーワード:南極、雪、フィルン、変態、氷床

深層アイスコアの信号をよりよく理解するために、南極ドームふじのフィルンの対深度の発達を調査した。私達は、現地でおこなった4m深の掘削ピットのサンプルと、122m深のアイスコアを用いて、主要な結晶組織構造特性、たとえは、近赤外光反射率R、密度 ρ、マイクロ波帯での誘電率異方性 Δεと主要イオン成分の関係の発達を調べた。調査した深度範囲は氷床表面(0m)から122m深までであり、高分解能解析(mm~cm)をおこなった。氷床表面付近において、フィルンには以下の特性を見いだした:(i)Rρや Δε の短区間の変動は、強い正の相関をもつ; (ii) Δε は、氷床表面直下(0.1m深)で0.03 – 0.07 の値をもつ; (iii) これらのRρや Δε の特性は、主要イオンの分布と有意な相関をもたない。一方、深さが増大し、近年報告されてきた「密度クロスオーバー現象」(氷床中約20-30m深で、初期低密度層の変形速度が卓越する結果として初期高密度層の密度が初期高密度層の密度を追い越してしまう現象)が起こっても R と Δε のもつ正相関はわずかに減少するものの強く維持される。さらには、 R は海塩の指標であるNa+イオンと弱い負の相関を示すようになる。これらの事実が示唆することは以下である。近赤外光反射R(フィルン中の比表面積の目安)の特徴は、誘電異方性Δε (フィルン中の氷と空隙の幾何構造異方性の指標)とともに、気泡が孤立する深度(bubble-close-off)まで維持される。その過程で、近年報告されてきたようにNaClから解離したCl- イオンが結晶格子に入り込むことによってその部位の変形が促進され、RとΔε の関係はわずかに乱される(相関が弱められる)。本研究では、アイスコアのもつ近赤外の光学的な特徴は、氷床表面付近でおこる変態に直接の起源をもっていることを見いだした。