日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC20] 雪氷学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*大畑 哲夫(情報システム研究機構・国立極地研究所・国際北極環境研究センター)、堀 雅裕(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)、鈴木 和良(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、杉山 慎(北海道大学低温科学研究所)

17:15 〜 18:30

[ACC20-P01] 多層積雪/土壌構造・多様な陸面パラメータを考慮したマイクロ波放射伝達モデルに基づく積雪物理量アルゴリズムの開発

*筒井 浩行1 (1.国立研究開発法人宇宙航空研究機構 地球観測研究センター)

キーワード:積雪、マイクロ波リモートセンシング、アルゴリズム

マイクロ波リモートセンシングに基づく積雪アルゴリズムの多くは、単層の積雪構造と多くの陸面パラメータの仮定により構成されたマイクロ波放射伝達モデル(以下、RTM)を用いている。我々のアルゴリズムもまた同様の構造のRTMが用いられていたために、積雪深の期待される推定精度をなかなか達成することができなかった。そこで本研究では、これまで用いていたDense Media Radiative Transfer model (DMRT; Tsang,1992)と4-Stream fast model(Liu, 1988)の結合モデルにAdvanced Integral Equation Model (AIEM; Chen,2001)を加え、土壌の地表面散乱効果を評価することのできるRTMに改良した。さらに単層構造であった積雪および土壌の多層化を図り、それぞれの層でパラメータを評価することができるように改良した。植生に関しては、S. Paloscia, and P. Pampaloni(1988)経験式により植生水分量を求めた上で、Jacson and Schmugge(1991)経験式により植生の光学的厚さを求め、ω-τmodel(Mo et al., 1982)により評価した。さらにD. M. Dobson et al.(1985)経験式に氷要素を加えて土壌の凍結も評価できるように改良した。仮定による不確実性を極力減らすために、RTMの感度試験を行った上で、土壌の間隙率・含氷率・水分量、雪温勾配、植生に対する葉面積指数(LAI)・植被率を陸面パラメータとした。このように改良したRTMを用いて、各陸面パラメータに対応するLookup table(以下、LUT)を計算し、AMSR2/AMSR-Eマイクロ波輝度温度(18.7GHz(v)/36.5GHz(v))から積雪深および各層の積雪パラメータを推定するアルゴリズムを開発した。アルゴリズムにおける各積雪層の雪粒子サイズは、雪粒子成長モデル(Sturm and Benson, 1977)により推定した。また雪面温度は、Richard(2003)経験式を用いAMSR2輝度温度(18.7(v), 23.8(v), 36.5(h),89.0(v) GHz)にから算定し、雪温勾配を用いて温度プロファイルを計算した。さらに各陸面パラメータに対応する附属全球データとして以下を用いた。全球間隙率データについては、ISLSCP経験式(間隙率= 1-[d/2.65]))を用いて体積密度(d, Harmonized World Soil Database)から間隙率を算定した。土壌凍結はNSIDC Permafrost/Ground ice mapにより判定した。全球土壌水分データおよび雪温勾配は、GLDAS-CLMに基づき算定した。LAI全球データとしてはMODIS LAIデータを用い、全球植生フラクションデータは、ESA Glob Coverデータセットに基づき算定した。2012年10月から2013年2月の期間、シベリア領域(N55-65°, E125-135°)に含まれるGSOD10ステーションおよぶAMSR2シベリア検証サイトを対象にアルゴリズムの性能を検証した結果、MAE(Mean Absolute Error):9cm・Bias:1.5cm・RMSE:14cmの精度を確認した。