日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC20] 雪氷学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*大畑 哲夫(情報システム研究機構・国立極地研究所・国際北極環境研究センター)、堀 雅裕(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)、鈴木 和良(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、杉山 慎(北海道大学低温科学研究所)

17:15 〜 18:30

[ACC20-P03] カーリングストーンの運動解析

*対馬 勝年森 克徳

キーワード:カーリング、氷、カール

YouTubeを通して数多くのカーリング世界選手権大会実況映像を見ることができる。この映像をムービーメーカで開くとコマ送り画面化され、画面の記録時間tが0.03~0.04秒間隔で表示されるからストーンの運動解析に役立つ。リンクには両端のハウス間を結ぶ中心線が引かれているからストーンの滑走時間tとカール距離C(中心線からのずれ)、自転角の変化n(ストーン上面のハンドルの向きや銘板が目印)、滑走距離s(hogline間距離21.85m、ハウス内の円の大きさ半径0.15m, 0.61m, 1.22m, 1.83m、リンクの幅4.8mそのほか氷の内部の埋め込まれた絵や文字、ストーンの直径0.3mなどを手掛かりとした)を読み取った。ストーンは初めほぼ直線的に進み、終端の12秒ほど手前からカールし始め、その後経過時間に比例してカール距離が増大し、停止時のCは1m内外であった。nは6~10秒に1回転で、終端に近づくほど1回転に要する時間が長かった。自転に対する摩擦係数は驚異的に小さく0.0001~0.00001のオーダーと見積もられた。ストーンを放出するhoglineから停止までの時間は23秒内外であった。hoglineとハウスの中心を通るTeeline間の距離は29mであるが、滑走距離sと滑走停止時間tから平均摩擦係数をμ=2s/(gt2)(ただしgは重力加速度)として見積もった。μは初め0.009程度と小さくほぼ一定値を維持したが、終端から12秒ほど手前から増大をはじめ終端近くで0.02程度まで増大した。滑走速度v0をv0=(2μgs)1/2として定めた。速度vは時間に対し大雑把には直線的に減少していた。これらの関係からC-s、μ-s、μ-v曲線を描くことができた。またμ-s曲線の面積μsgが摩擦エネルギーに相当することからμsg=g∫μsdsとおいて真の摩擦係数μの図に補正することができた。これらの解析からカールの開始と摩擦係数の増大が対応していることが確認された。
カール開始からの時間をτとすると、C=kτであったことから、vc=k、dvc/dτ=0となり、FB説が主張する横力つまりカール方向の力は見いだされなかった。C-s曲線はLR説から導かれるカール式C=(1/2r2)y(y+r)ε、[rはランニングバンドの半径、εはrだけ進んだときのカール]においてε=1μmとしたときによく適合した。これは左右摩擦差が0.002程度になることを示唆する。