日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC20] 雪氷学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*大畑 哲夫(情報システム研究機構・国立極地研究所・国際北極環境研究センター)、堀 雅裕(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)、鈴木 和良(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、杉山 慎(北海道大学低温科学研究所)

17:15 〜 18:30

[ACC20-P07] 硫黄同位体比分析による東南極表面雪の硫酸エアロゾルの起源推定

*植村 立1眞坂 昂佑1福井 幸太郎2飯塚 芳徳3平林 幹啓4本山 秀明4 (1.琉球大学 理学部、2.立山カルデラ砂防博、3.北海道大学 低温研、4.国立極地研究所)

キーワード:硫酸エアロゾル、南極、硫黄同位体

硫酸エアロゾルは、生物活動を通して温暖化を抑制する負のフィードバックをもつとする仮説が提唱されるなど生物圏と気候変動との関係という点からも注目を集めている。南極アイスコアには、過去数十万年の硫酸エアロゾルの変動記録が保存されており、長期的な気候変動メカニズムを解析できる貴重な試料である。
硫酸エアロゾルの硫黄安定同位体比(δ34S)は、起源ごとに特有の値を示すことが知られている。東南極の3地点で観測されたδ34S値は、海洋生物起源物質(DMS)が主な起源であるとするイオン濃度等から予測と整合的である。対照的に、西南極2地点におけるδ34S値は非常に低い値を示しており、予想以上に火山活動か成層圏からの寄与が高いことを示唆している。しかし、南極におけるδ34Sの研究例は各観測拠点で散発的に行われており、空間的な分布は不明である。そこで、本研究では、南緯70度から80度にかけての表面積雪のδ34S空間分布を明らかにすることを目的として研究を行った。
試料は、第54次南極地域観測隊(JARE54)で採取された表面積雪試料のδ34Sを測定した。δ34S値は全11地点において、変動幅0.9‰と均一であり、緯度や標高に対する依存性もなかった。この観測値は東南極における3地点の過去の報告値と変動の範囲内で一致しており、δ34S値が東南極の広範囲で均一な値であることが明らかになった。これらの地点ではNaから推定される海塩寄与率が低いことから、海塩の影響は少ない。δ34S値に基づく推算では、非海塩起源硫酸エアロゾルのうちの93 ± 17%が海洋生物起源であると推定された。