日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC20] 雪氷学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*大畑 哲夫(情報システム研究機構・国立極地研究所・国際北極環境研究センター)、堀 雅裕(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)、鈴木 和良(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、杉山 慎(北海道大学低温科学研究所)

17:15 〜 18:30

[ACC20-P13] 降雨時の融雪熱収支特性 -本州中部における盆地と山岳地の比較-

加藤 和輝1、*河島 克久2松元 高峰2伊豫部 勉3鈴木 修4佐々木 明彦5鈴木 啓助5 (1.新潟大学理学部、2.新潟大学災害・復興科学研究所、3.京都大学大学院工学研究科、4.東日本旅客鉄道株式会社、5.信州大学理学部)

キーワード:ROSイベント、融雪、熱収支

1.はじめに
積雪期の降雨現象(ROS)は様々な災害を誘発することが知られている。これはROS発生時には降雨と同時に強い融雪が発生し,積雪・地中に多量の水が浸透することが原因だと考えられている。ROS発生日の融雪熱収支特性に関する研究として,Mark et al.(1998)が山岳地の観測から,ROS発生日は非降雨日よりも融雪熱量が大きいことを明らかにしている。一方,小島ら(1973)は盆地での観測からMark et al.(1998)と逆の結果を得ている。しかし研究事例が少なく,また年による熱収支特性の違いも解明されていない。さらに,盆地と山岳地では非降雨日とROS発生日の融雪熱量の大小関係が逆であるが,その原因はまだ明らかでない。そこで本研究ではROS発生日の融雪熱収支特性を明らかにすることを目的として熱収支解析を行った。
2.研究地域と方法
ROS発生日と非降雨日の融雪熱収支特性を比較するため,新潟県魚沼市大白川(標高360m)で2012~2015年融雪期に得られた気象データを解析した。一方,盆地と山岳地の融雪熱収支特性の違いを見るため,大佐渡山地(標高800m)と御嶽山(標高2,195m)の2015年融雪期の気象データを解析した。解析期間は3月1日から消雪日までとし,本研究では平井ら(2015)を参考にして日降雨量が10mm以上の日をROS発生日とした。
3.解析結果
大白川の解析から,4年の平均ではROS発生日は短波収支が小さくなるため非降雨日より融雪熱量が小さくなった。しかし,年ごとに比較すると,ROS発生日の融雪熱量はその出現時期によりアルベド・気温が大きく異なるため大きな違いが認められる。また,盆地(大白川)と山岳地(大佐渡山地,御嶽山)を比較すると,ROS発生日の融雪熱量は山岳地の方が圧倒的に大きい。これは山岳地では風速が強く,顕熱・潜熱輸送が大きくなるためである。このことから,標高の高い山岳地では,ROS発生日は降雨と融雪で積雪・地中に浸透する水量が極めて多くなるため,土砂災害や雪崩災害が発生する危険性が高いと言える。