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[ACC21-11] 天山山脈グリゴレア氷帽アイスコア中に観察された特異な炭酸塩鉱物層
キーワード:アイスコア、炭酸塩鉱物、中央アジア
2007年天山山脈グリゴレア氷帽(4600m)の頂上部で,深さ約87mの岩盤まで達するアイスコアを掘削した.本研究では,そのアイスコア中に見られた特異的に炭酸塩鉱物が大量に含まれる層について報告する.アイスコア中には,多数の茶色いダスト層が含まれており,顕微鏡観察からそのダスト層はどれも珪酸塩鉱物の粒子で構成されていた.一方,表面から深さ53.5 mの層に,顕微鏡観察から他の層の鉱物粒子とは明らかに異なる透明な粒子が大量に含まれていることが明らかになった.電子顕微鏡(SEM)による観察と分析の結果,この粒子は炭酸塩鉱物であること,他のダスト層にみられるような珪酸塩鉱物はわずかしか含まれていないことがわかった.さらにその層では,酸素安定同位体比が厚さ10cmに渡って約6‰の低下が見られ,溶存化学成分も濃度が数倍の上昇がみられた.花粉を使った年代決定から,この層は西暦1833年に相当することがわかった.以上の結果は,この年に大量の降雪をともなう特異なイベントが起こったことを示している.炭酸塩鉱物の起源については,はっきりしたことはわからないが,周囲の土壌に由来するものではなく,遠方の乾燥地帯で巻き上げられたものが巨大な嵐によってもたらされたものであると考えられる.