日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG06] Multi-scale ocean-atmosphere interaction in the tropics

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、Qu Tangdong(University of Hawaii at Manoa)、長谷川 拓也(独立行政法人海洋研究開発機構)、名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、時長 宏樹(京都大学防災研究所・白眉センター)、清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、大庭 雅道(電力中央研究所 環境科学研究所 大気海洋環境領域)

17:15 〜 18:30

[ACG06-P08] 気象研究所における大気・海洋結合同化システムの開発

★招待講演

*藤井 陽介1石橋 俊之1安田 珠幾2齊藤 直彬1竹内 義明1 (1.気象研究所、2.気象庁)

キーワード:データ同化、シームレス予報、季節予報

大気海洋結合モデルに大気・海洋観測データを直接同化するシステムを大気海洋結合同化システムと呼び、これまで、数日先の気象を予測するいわゆる天気予報と数週間から数ヶ月先の気候予測を同一のモデルで行うシームレス予測の実現や、エルニーニョなどの予測のさらなる高精度化への有効性が指摘されている。例えばJAMSTECは、世界に先がけて4次元変分法による結合同化システムを開発し、エルニーニョ予測の改善の可能性を示している(e.g. Sugiura et al. 2008; Masuda et al. 2015)。また、気象研では、2006年より、結合モデルに海洋観測データのみを同化する(大気観測データは同化しない)準結合同化システムを開発し、大気モデルを観測海面水温データで駆動したAMIPランと比べて、ウォーカー循環やモンスーントラフ、フィリピン沖の熱帯低気圧の活動などが改善されることを確認している (Fujii et al. 2009, 2011)。
そのため近年NCEP、ECMWF、UKMOなどの現業機関が、シームレス予測や気候予測の高精度化に向けて、結合同化システムの開発、運用を開始している(Saha et al. 2010, Laloyaux et al. 2015, Lea et al. 2015)。ただし、現在開発されているのは、大気解析値は大気データ同化システム、海洋解析値は海洋データ同化システムで別々に作成し、これらの解析値から結合モデルで予測を行い次の解析時刻の第一推定値を作成するいわゆる弱結合同化システムである。弱結合同化システムでは、解析値を計算するときに大気と海洋のバランスを陽に評価していないという点で不十分であるが、既存の大気及び海洋の同化システムをそのまま利用できるので開発が比較的容易である。
気象研でも将来の気象庁現業での利用に向けて、4次元変分法全球大気同化システム(MRI-NAPEX)、全球海洋データ同化システム(MOVE-G2)、季節予報用大気海洋結合モデル(JMA/MRI-CGCM2)を組み合わせた弱結合データ同化システムの開発を行っている。このシステムでは、大気の同化ウィンドウは6時間、海洋の同化ウィンドウは10日とし、MRI-NAPEXで計算された大気解析値を初期値とし、MOVE-G2で計算された海洋の解析インクリメントを与えながら、JMA/MRI-CGCM2を駆動することで、次の大気同化ウィンドウにおける大気初期推定値を算出する予定である。これは、4次元変分法同化システムにおいて大気モデルをいわゆるインナーループ、大気海洋結合モデルをいわゆるアウターループとして利用することに相当する。なお、本システムで利用するMOVE-G2およびJMA/MRI-CGCM2は、2015年6月より気象庁現業季節予報で使われている海洋データ同化システムおよび大気海洋結合モデルである。
気象研では、上記の弱結合同化システムの開発に先がけて、MOVE-G2およびJMA/MRI-CGCM2を用いた準結合同化システムを完成させ、準結合同化システムを用いた2000年以降の再解析実験を実施した。発表では、開発中の弱結合同化システムの仕様や特徴などについての紹介と共に、準結合同化システムの再解析実験の結果についても示す予定である。