日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG09] Development and application of land and ocean biogeochemistry components of Earth system models

2016年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 102 (1F)

コンビーナ:*河宮 未知生(海洋研究開発機構)、立入 郁(海洋研究開発機構)、羽島 知洋(独立行政法人 海洋研究開発機構)、アローラ ビベック(カナダ気候モデル解析センター)、座長:Arora Vivek(Canadian Centre for Climate Modelling and Analysis, Environment and Climate Change Canada)

15:30 〜 15:45

[ACG09-07] A study on spatial and temporal variability of sediment in rivers using global sediment transport model

向田 清峻1、*芳村 圭1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:global sediment transport model, suspended flow, sediment regime

土砂の輸送量の研究は、個々の粒子の振る舞いの詳細な実験による観察やある対象地域における浸食量、堆積量を見積もるなど様々なスケールで行われてきた。個々の研究においては粒径分布や土地利用、土壌の種類など様々な要因について輸送量の時間変動への影響を示唆している。全球スケールにおいては、流域の大まかな気候区分や地形情報を用いて年々変動を表現する経験式を作成することが現在行われて来ている。それに対して本研究においては大河川において土砂動態の時間的変動、空間的変動の理解、再現、予測へとつなげていくために、現状をうまく説明する経験式を推定する立場とは別の、物理過程に従う物質の体積輸送により把握するという立場に立ったアプローチを取る。本研究においては全球スケールの土砂動態を表現するために、物理的過程に基づいて水の流下を計算する全球河川モデルCaMa-Flood (Yamazaki et al. 2011)に、浸食、運搬、堆積の現象に基づいた土砂の輸送過程を導入し、全球土砂輸送モデルCaMa-SEDを開発した。土砂生産過程においては、降水量と傾斜を用いて土砂生産量を推定し、モデルの中で土砂の運搬に関しては流水と同じように移流方程式を用いて掃流輸送と浮遊輸送の二つの輸送形態を計算過程として用い水平方向の移動を表現し、鉛直方向の移動としては河床への沈降量と河床からの巻き上げ量の変数を与えた。ストレージとして浮遊土砂量と堆積土砂量を逐次計算することによって各構成要素の輸送量への寄与を計算することができる。粒径別の計算結果によって河川の上流部から流下した土砂が輸送され粒径の大きいものから先に堆積していく作用による土砂輸送量の空間分布が計算可能となり、細粒分が河口での土砂量を支配していることを示した。生産、運搬、堆積の物理過程に基づいた計算を用いた感度実験の結果により、土砂輸送量に関して沈降速度の感度が高いことが分かった。河口への輸送量が多い粘土、シルト分において沈降速度が非常に小さいため一度浮遊した土砂が沈降しないことに由来する。定点観測データとの比較により、レジーム則や従来の全球河川モデルでは表現できなかった流量と濃度のピークタイミングのずれであるヒステリシス効果を表現することが可能になった。