日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG22] 陸域生態系の物質循環

2016年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 101B (1F)

コンビーナ:*加藤 知道(北海道大学農学研究院)、平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)、佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)、平田 竜一(国立環境研究所)、座長:平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)

09:30 〜 09:45

[ACG22-03] 13Cパルスラベリング実験を用いたモンゴル森林域におけるシベリアカラマツの樹体内炭素転流と配分量の推定

*北山 あさみ1杉本 敦子2ミジズーレン ビアンバズーレン3プレブスレン バットデルガー3 (1.北海道大学大学院環境科学院、2.北海道大学地球環境科学研究院、3.モンゴル生命科学大学)

キーワード:モンゴル、カラマツ、13Cパルスラベリング実験、炭素配分

タイガ林南限域であるモンゴル北部森林域では、近年の急激な環境変動を背景に樹木年輪幅時系列データを用いて樹木成長量の解析が行われてきた。これまでに、近年の厳しい乾燥イベントがこの地域に生育するシベリアカラマツ(以下、カラマツ)の成長量低下を引き起こしている可能性が指摘されている。しかしながら、この地域に生育するカラマツの乾燥ストレスへの生理学的応答に関する知見は未だ不足している。また、カラマツがどのように炭素を樹体内で各部位に配分し、夏期降水量200~300mm程度の乾燥環境下で生育しているのかについては未だ明らかになっていない。そこで本研究では、近年のカラマツの樹体内炭素アロケーションを明らかにし、より詳細なカラマツの生理学的応答の情報を得るために、13Cパルスラベリング実験をモンゴル北東部のウランバートルから南東55.8 kmに位置するKTサイト(47.7N, 107.6E)で実施した。
13Cパルスラベリング実験は合計29個体のカラマツの若木を対象に2014年6月中旬及び8月上旬の計2回実施した。各実験において最長約1年の追跡期間を設け、2014年夏期から2015年夏期後半までの樹体内炭素アロケーションを調べた。
2014年6月実験由来13Cのほとんどは、落葉直前まで葉に存在し、他部位への炭素配分量は小さかった。8月実験由来13Cは葉内に取り込まれた後、素早く各部位へ転流し、6月実験と比較して多くの13Cが根部へと配分されていた。これは翌年の成長に向けた炭素貯蓄であると考えられる。実際に、翌年(2015年)の展葉には、8月実験由来13Cがより多く使用されている可能性が示唆された。