日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG22] 陸域生態系の物質循環

2016年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 101B (1F)

コンビーナ:*加藤 知道(北海道大学農学研究院)、平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)、佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)、平田 竜一(国立環境研究所)、座長:加藤 知道(北海道大学農学研究院)

11:00 〜 11:15

[ACG22-07] 冷温帯林における光合成機能の鉛直分布とその季節変化

*辻本 克斗1川島 在悟1加藤 知道2村岡 裕由3斎藤 琢3秋津 朋子4奈佐原 顕郎4 (1.北海道大学大学院農学院、2.北海道大学農学研究院、3.岐阜大学流域圏科学研究センター、4.筑波大学大学院生命環境科学研究科)

キーワード:クロロフィル蛍光、環境ストレス

植生は環境からストレスを受けており,それによって光合成機能の日・季節サイクルは大きく影響を受ける.近年,陸域生態系の光合成機能を衛星・地上リモートセンシングから推定する試みが行われているが,その中でもクロロフィル蛍光を利用した光合成ストレスの検出は大変重要であると考えられている.しかし,それらは植生を上方のみからモニタリングするため,特に生態系の中層・下層に多くのバイオマスを抱えている森林生態系について大きな観測誤差が生じる可能性が高い.したがって,より正確に光合成機能を推定するには,植生の環境ストレスの鉛直分布を調べなければならない.
そこで本研究では,森林生態系の各層における光合成のストレス状態と環境要因(光・温度)との関係について調べた.観測は,岐阜県高山市の常緑針葉林と落葉広葉林で行った.サイトにはそれぞれ観測塔および観測櫓が建っており,個葉にアクセスできる.測定は2015年6月,8月,10月に,それぞれのサイトでおこなった.2台の蛍光測定器(FlourPen FP100, 及びFluorPen FP100-MAX, Photon Systems Instruments, Brno, Czech Republic)を用いてクロロフィル蛍光パラメータと光合成有効放射を,放射温度計(放射温度計B, シンワ測定)で葉温を測定した.これらを1日5回,日の出直後から日の入りまでおこなった.
6月のスギにおいて,上層の葉群が中・下層に比べて量子収率が日中により低下し,ストレスを受けていることがわかった.それに比べミズナラについては層ごとに違いは見られなかった.これは,弱い光でも量子収率が低下するほどミズナラの林床葉群のクロロフィル含量ならびに光合成能力が低いためであると考えられる.