日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG22] 陸域生態系の物質循環

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 101B (1F)

コンビーナ:*加藤 知道(北海道大学農学研究院)、平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)、佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)、平田 竜一(国立環境研究所)、座長:佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)

14:15 〜 14:30

[ACG22-13] 大気汚染下での葉の濡れが及ぼす森林炭素循環への影響

*堅田 元喜1星加 康智2 (1.日本原子力研究開発機構、2.イタリア国立研究機関 環境保護研究所)

キーワード:森林炭素循環、大気汚染、樹冠の濡れ

対流圏オゾンは、森林樹木の光合成活動を阻害するとともに、森林微気象の変化に対する気孔応答の鈍化を誘発し、森林の水・炭素循環に影響を与える。この影響は、現在の陸面モデルには考慮されていない。本研究では、オゾンによる気孔応答の鈍化を考慮した多層陸面モデルSOLVEGと全球化学輸送モデルを組み合わせて、北半球の温帯落葉樹林へのオゾンによる影響を調べた。この陸面モデルには、キャノピーの濡れ状態に応じたオゾンの吸収と、それに伴うカルボキシル化速度(Vcmax)と気孔コンダクタンス(gs)の変化が考慮されている。シミュレーションの結果、高オゾン濃度地域では、気孔応答の鈍化により森林の光合成活動の低下と蒸散の促進が同時に起こり、水利用効率が大幅に低下することが明らかになった。一方、年間の降水頻度が高い地域では、オゾンによる森林への影響は小さかった。これらの結果は、オゾンによる森林影響は、オゾン濃度だけでなく濡れ期間にも依存することを示唆している。今後、アジアで年間降雨日数が減少するという予測もあり、これによる濡れ期間の短縮によって大気汚染下での気孔応答の鈍化と光合成の低下が進み、森林生態系の水・炭素循環が変化する可能性がある。