日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG22] 陸域生態系の物質循環

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*加藤 知道(北海道大学農学研究院)、平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)、佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)、平田 竜一(国立環境研究所)

17:15 〜 18:30

[ACG22-P09] 衛星ライダーによるシベリアの森林資源変化の把握

*林 真智1市井 和仁2,1平 春1三枝 信子1澤田 義人1山形 与志樹1 (1.国立環境研究所、2.海洋研究開発機構)

キーワード:森林資源、衛星ライダー、ICESat/GLAS、シベリア

シベリアを含む北半球高緯度地域では、地球温暖化による気温の上昇が最も急速に進行しており、こうした地域で植生の変化状況をモニタリングする技術を整備することは、極めて重要な課題となっている。継続的に広域を観測するためには衛星リモートセンシングを活用することが現実的だが、中でも、レーザ光を照射して地表面付近の鉛直構造を計測できる衛星ライダーが近年注目を集めている。これまでは、2003~2009年にNASAが運用したICESat衛星が唯一のものであったが、数年以内に打ち上げ予定の衛星ライダーが複数機計画されており、森林観測への利用が見込まれている。そこで本研究では、既存の衛星ライダーICESat/GLASをシベリアの森林資源変化の観測に応用し、その能力を明らかにすることを目的とした。北緯40°以北かつ東経60°以東で西経170°までの範囲を観測したGLASデータを収集し、解析に適さないデータのスクリーニングをおこなった。具体的には、(1) 雲や非森林域を観測したデータ、(2) 波形にノイズが多いデータ、(3) 計測誤差が大きくなる傾斜地のデータなどである。その結果、解析に適した約300万点のデータセットを整備した。次に、GLAS波形の形状を解析することで、各観測地点における樹高と地上部バイオマスを推定した。樹高は、波形の開始位置と地盤からの反射ピークとの標高差であるRH100を計算した。地上部バイオマスは、シベリアを対象とした先行研究(Neigh et al., 2013)により構築された推定モデルにもとづいて計算した。その結果、対象地域全体での樹高と地上部バイオマスの平均は7.4mおよび23.0 Mg ha-1であった。次に、森林資源の空間分布を把握するため、緯度経度ともに5°メッシュごとに樹高と地上部バイオマスのGLAS推定値の平均を計算した。樹高と地上部バイオマスの空間分布は類似しており、おおむね南では高く、北ほど低い値を示した。また、時間変化を把握するため、GLASの観測時期に応じて2つのグループ(2003~2005年観測データ、2005~2007年観測データ)に分割し、それぞれの平均値を計算してその変化傾向を確認した。その結果、樹高は全体にわずかに低下する傾向が見られた一方、地上部バイオマスは多くの地域で変化が見られないものの、西部など一部に増加傾向を示す地域が見られた(図を参照)。今後は、こうした変化傾向を示す原因について検討を進める予定である。このように、衛星ライダーを利用することで、広域の森林資源の変化状況を高精度にモニタリングできることが示された。