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[ACG23-05] 夏季の大槌湾における海底地下水流入量および栄養塩輸送量の推定
キーワード:海底地下水湧出、大槌湾
三陸海岸に属する大槌湾は,後背地に豊富に地下水資源が存在していることが知られており,海底からも地下水が湧出している.しかしながら,大槌湾に流入する地下水量および栄養塩輸送量の定量的な評価はなされていない.本研究では,大槌湾に流入する淡水性地下水の湧出量および地下水湧出に伴う栄養塩輸送量を,ラドン濃度と塩分の収支解析より推定した.現地観測は,潮汐の影響を考慮し,2015年8月の大潮期の上げ潮・下げ潮,小潮期の上げ潮・下げ潮の計4回実施した.ラドン濃度と塩分の収支解析より淡水性海底地下水の湧出量を算出した結果,地下水湧出量は0.10~1.07×106 m3 day-1 (平均:0.43×106 m3 day-1)と推定された.大槌湾集水域における年間水収支法より推定された地下水涵養量は0.63×106 m3 day-1となり,本研究で得られた地下水湧出量と同程度の結果となった.次に,推定された海底地下水湧出量に陸域地下水の栄養塩濃度を乗じることにより,栄養塩輸送量を見積もった.その結果,DIN輸送量は73.5~748.8 kg day-1,DIP輸送量は11.1~113.2 kg day-1と推定された.これに対して,河川水によるDIN輸送量は127.9~336.6 kg day-1,DIP輸送量は1.7~7.8 kg day-1であった.陸水が供給する栄養塩量に占める海底地下水由来の栄養塩量の割合は,DINでは40%,DIPでは33%となった.また,海底地下水によるDIP輸送量は外洋水によるDIP輸送量のわずか0.2%であるのに対し,DIN輸送量は外洋水によるDIN輸送量の7.7%に相当した.成層期における大槌湾では,湾内海水のN/P比はレッドフィールド比よりも低くなることが多い.それ故,海底地下水によるDIN供給は成層期の大槌湾の一次生産過程に無視できない要素となっているだろう.