09:00 〜 09:15
[ACG24-01] GRENE 北極気候変動研究プロジェクトまとめと今後の課題
キーワード:北極、海氷、温暖化増幅、中緯度影響、北極海航路
グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)北極気候変動研究プロジェクト「急変する北極気候システム及びその全球的な影響の総合的解明」は、2011〜2015年度の5カ年にわたって実施された、わが国初の、分野横断、観測・モデル融合、オールジャパンの北極研究である。既に、プロジェクト期間は終了し、多くの成果を得たとともに、これからの観測・研究のための基盤をも整備することができた。
本プロジェクトでは4つの戦略研究目標が提示された:
1.北極における温暖化増幅メカニズムの解明、
2.全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割の解明、
3.北極域における環境変動が日本周辺の気象や水産資源等に及ぼす影響の評価、
4.北極海航路の利用可能性評価につながる海氷分布の将来予測。
その解明を目指して公募された7つの研究課題が推進された:
(1)北極気候再現性検証および北極気候変動・変化のメカニズム解析に基づく全球気候モデルの高度化・精緻化、
(2)環北極陸域システムの変動と気候への影響、
(3)北極温暖化のメカニズムと全球気候への影響:大気プロセスの包括的研究、
(4)地球温暖化における北極圏の積雪・氷河・氷床の役割、
(5)北極域における温室効果気体の循環とその気候応答の解明、
(6)北極海環境変動研究:海氷減少と海洋生態系の変化、
(7)北極海航路の利用可能性評価につながる海氷分布の将来予測。
このように、トップダウンで示された目標に向けてボトムアップで構想された課題を進めるという大変ユニークな構成であった。
プロジェクトでは、2011 年開始以来、北極を周る様々な場所、スバールバルから、ロシア・シベリア、アラスカ、カナダ、グリーンランドに北極海と多岐にわたる場所で観測が行われてきた。特に、スバールバル・ニーオルスンには、高精度の雲レーダー(95 GHz)が設置され、大気の集中観測が行われている。また、北極海では「みらい」や砕氷船の航海が行われ、係留系の観測も進められた。取得したデータは北極データアーカイブ(ADS)に蓄積され、解析用のインターフェースとともに供されている。また、原理的な物理モデルから大循環モデルまで、様々なモデル研究が進められて来た。
これらの観測・研究を通じ、多くの新たな研究成果が生まれているが、その代表的なものとしては:
(1)北極温暖化増幅の季節進行を含めた詳しいしくみ、
(2)北極温暖化の中緯度影響、特に日本の冬の寒波・豪雪への影響、
(3)北極海氷予測と北極海航路の可能性、
(4)陸上植物活動の変化と大気中CO2吸収の増加、
(5)生態系に影響する海洋酸性化等の海洋環境変化と優占種の変化、
(6)氷河・氷床崩壊による海面上昇への寄与、
などがあげられよう。戦略研究目標毎の関係を示した科学的成果の関連は図1の通りである。
しかし、温暖化に伴う雲のふるまい、気象予測の高精度化、水循環、永久凍土融解や海洋底からのメタン発生など、未だ解明しきれなかった課題も多く、今後の研究が待たれる。基盤施設としての雲レーダーをはじめ、GRENE で培われた分野融合の研究体制などをLegacyとして、これからの研究を進めて欲しい。既にArCS(Arctic Challenge for Sustainability 北極域研究推進)プロジェクトやYOPP(極域予測年;WMO/PPP極域予測プロジェクト)をめざした計画が進んでいるが、それ以外にも、活発な研究推進が期待される。
本プロジェクトでは4つの戦略研究目標が提示された:
1.北極における温暖化増幅メカニズムの解明、
2.全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割の解明、
3.北極域における環境変動が日本周辺の気象や水産資源等に及ぼす影響の評価、
4.北極海航路の利用可能性評価につながる海氷分布の将来予測。
その解明を目指して公募された7つの研究課題が推進された:
(1)北極気候再現性検証および北極気候変動・変化のメカニズム解析に基づく全球気候モデルの高度化・精緻化、
(2)環北極陸域システムの変動と気候への影響、
(3)北極温暖化のメカニズムと全球気候への影響:大気プロセスの包括的研究、
(4)地球温暖化における北極圏の積雪・氷河・氷床の役割、
(5)北極域における温室効果気体の循環とその気候応答の解明、
(6)北極海環境変動研究:海氷減少と海洋生態系の変化、
(7)北極海航路の利用可能性評価につながる海氷分布の将来予測。
このように、トップダウンで示された目標に向けてボトムアップで構想された課題を進めるという大変ユニークな構成であった。
プロジェクトでは、2011 年開始以来、北極を周る様々な場所、スバールバルから、ロシア・シベリア、アラスカ、カナダ、グリーンランドに北極海と多岐にわたる場所で観測が行われてきた。特に、スバールバル・ニーオルスンには、高精度の雲レーダー(95 GHz)が設置され、大気の集中観測が行われている。また、北極海では「みらい」や砕氷船の航海が行われ、係留系の観測も進められた。取得したデータは北極データアーカイブ(ADS)に蓄積され、解析用のインターフェースとともに供されている。また、原理的な物理モデルから大循環モデルまで、様々なモデル研究が進められて来た。
これらの観測・研究を通じ、多くの新たな研究成果が生まれているが、その代表的なものとしては:
(1)北極温暖化増幅の季節進行を含めた詳しいしくみ、
(2)北極温暖化の中緯度影響、特に日本の冬の寒波・豪雪への影響、
(3)北極海氷予測と北極海航路の可能性、
(4)陸上植物活動の変化と大気中CO2吸収の増加、
(5)生態系に影響する海洋酸性化等の海洋環境変化と優占種の変化、
(6)氷河・氷床崩壊による海面上昇への寄与、
などがあげられよう。戦略研究目標毎の関係を示した科学的成果の関連は図1の通りである。
しかし、温暖化に伴う雲のふるまい、気象予測の高精度化、水循環、永久凍土融解や海洋底からのメタン発生など、未だ解明しきれなかった課題も多く、今後の研究が待たれる。基盤施設としての雲レーダーをはじめ、GRENE で培われた分野融合の研究体制などをLegacyとして、これからの研究を進めて欲しい。既にArCS(Arctic Challenge for Sustainability 北極域研究推進)プロジェクトやYOPP(極域予測年;WMO/PPP極域予測プロジェクト)をめざした計画が進んでいるが、それ以外にも、活発な研究推進が期待される。