日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW16] 流域生態系の水及び物質の輸送と循環-源流域から沿岸域まで-

2016年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 302 (3F)

コンビーナ:*吉川 省子(農業環境技術研究所)、小林 政広(国立研究開発法人森林総合研究所)、奥田 昇(総合地球環境学研究所)、小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)、知北 和久(北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、中屋 眞司(信州大学工学部水環境・土木工学科)、齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、座長:奥田 昇(総合地球環境学研究所)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

14:45 〜 15:00

[AHW16-17] 大阪湾における河川プリュームの動態解析:海色衛星観測データを用いた海表面塩分の新推定法

*中田 聡史1小林 志保2石坂 丞二3林 正能5渕 真輝1中嶋 昌紀4 (1.神戸大学海事科学研究科、2.京都大学フィールド科学教育研究センター、3.名古屋大学宇宙地球環境研究所、4.大阪府立環境農林水産総合研究所、5.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:海色衛星画像、有色溶存有機物、海表面塩分、河川プリューム

河川から沿岸海域に出水される低塩分水(河川プリューム)は陸域由来の有機物を多く含むため、海洋生態系や漁場環境への栄養塩を供給する。しかし、時として有害な赤潮を引き起こすこともある。それゆえ、低塩分水の指標となる海表面塩分(SSS)の情報は、内湾域の水環境のみならず漁場環境の保全の観点から非常に重要であり、沿岸漁業者からも関心が高い。近年、衛星観測技術の発達により、毎日の海表面水温だけでなく、SSSも面的にわかるようになった。従来のSSSデータの水平分解能は約50 km(例えば、SAC-D衛星)であるため、沿岸域で使用するには極めて困難で、観測誤差も大きい。ゆえに、沿岸域において衛星データから塩分場を推定する手法は未だ確立されていない。沿岸域には、河川出水などの陸水由来の有色溶存有機物(CDOM)が存在し、CDOM濃度と塩分値には高い相関関係があることが知られている。本研究ではこの関係を利用して、海洋観測に基づいて、衛星観測により得られたCDOM濃度から海表面塩分値を推定する。海色衛星データから推定した海表面塩分マップを整備し、河川プリュームの動態を解析する。
河川からの陸水負荷が大きく、現場観測データが豊富である大阪湾沿岸海域を実験対象とした。2011年より、「千里眼」と呼ばれる静止衛星の毎時観測によって得られた高解像度(500 m)のGOCIプロダクトを使用した。河川出水が卓越する夏季から秋季にかけて沿岸海域において現場観測・採水を実施し、塩分プロファイルを取得、表層海水中の現場CDOM濃度を測定した。また、関係機関により観測されている多くの現地定点・定線観測による塩分データを収集し、これらの観測データを用いてCDOM衛星データから塩分値の推定式を作成した。解析結果の一例として、本発表では2015年7月~9月における淀川からの河川プリュームの水平パターンやその時間変動を、気象擾乱による河川出水等の陸水イベントと関連付けながら紹介する。