日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW16] 流域生態系の水及び物質の輸送と循環-源流域から沿岸域まで-

2016年5月26日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*吉川 省子(農業環境技術研究所)、小林 政広(国立研究開発法人森林総合研究所)、奥田 昇(総合地球環境学研究所)、小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)、知北 和久(北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、中屋 眞司(信州大学工学部水環境・土木工学科)、齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科)

15:30 〜 16:45

[AHW16-P04] 阿武隈山中の農業用ため池における浮遊物質動態の特徴

*久保田 富次郎1申 文浩1濵田 康治1人見 忠良1 (1.国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)

キーワード:農業用ため池、浮遊物質

2011年3月11日に発生した東日本大震災に起因する原子力災害により、福島県の一部地域で放射性Csによる沈着が生じ、今後の復興に向けた懸念要因の一つとなっている。そのため、この地域において放射性Csの動態を把握することが重要な課題である。一方、林地からの放射性Csの流出をはじめとして、渓流や河川等の水系を通じた放射性Csの動態においては、全放射性Csに占める溶存態放射性Csの割合は全般に少なく、懸濁態放射性Csの割合が卓越することが報告されている。従って、水系を通じた放射性Csの動態を総量で把握するためには、まず浮遊物質の動態を把握することが課題となる。
本研究では、放射性Csの蓄積が課題となっている農業用ため池を対象として、浮遊物質の動態を阿武隈山中の実際のため池における現地観測に基づいて、その特性について検討を行う。調査ため池は、福島県飯舘村の阿武隈山中に立地する谷型ため池であり、最大水深は、満水時で3.3mである。流入渓流は2本あり、流出は斜樋と洪水吐の2経路である。このうち斜樋を閉じることで洪水吐のみから流出が生じるよう設定した。
浮遊物質の観測は、流入・流出合わせて3地点において自動採水器による試水分析と濁度計を用いて浮遊物質濃度を連続的に推定した。また、流量は、水位観測とともに量水堰および堰の流量公式を用いて算定した。浮遊物質濃度と流量を用いて浮遊物質負荷量を算定した。
2014年5月中旬より12月初旬までの調査期間について、浮遊物質負荷量の収支を検討したところ、流入はトータルで60.7t、内訳を見ると、渓流1で40.9t、渓流2で19.8tであった。一方、洪水吐からの流出は8.3tと少なかった。このように収支を見ると、調査期間で52.4tが貯水池に蓄積した計算であり、ため池に流入する浮遊物質のうち、86%はため池に蓄積し、流出は14%と限られていた。
今後は、放射性Csの動態も含めて検討を進めていきたい。