日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW17] 水循環・水環境

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)

17:15 〜 18:30

[AHW17-P06] 気候変動予測の不確実性を、いつまでにどれだけ低減できるか?

*塩竈 秀夫1Daithi Stone2江守 正多1高橋 潔1森 俊介3前田 章4Myles Allen5 (1.国立環境研究所、2.Lawrence Berkeley National Laboratory、3.東京理科大、4.東京大学、5.University of Oxford)

キーワード:気候変動、気候変動予測

全球平均地上気温変化(dT)の将来予測には、大きな不確実性がある。気候安定化のための政策に関する議論の多くは、気候変動予測の不確実性に関する「現時点での知見」に基づいている。この予測の不確実性を低減するために多くの努力が行われているが、いつまでにどれだけ低減できるかが分からないため、「将来の将来予測不確実性の低減」に関する情報を、政策判断に盛り込むことは出来ていない。気候政策の逐次意志決定に関する研究も行われているが、「2030年に完璧な知見が得られる」などの理想的な仮定をおくしかない状況である。
我々は、CMIP5マルチGCMアンサンブルの実験結果を解析し、「dT将来予測の不確実性を、いつまでにどれだけ低減できるか」を評価する手法を開発した。ここでは、1つのGCMの将来予測実験結果を疑似観測データだと仮定し、ほかのGCMの実験結果を予測だと考える。その上で、過去の観測データとGCM予測実験との比較によって将来予測の不確実性を制約するASK法(Allen et al. 2000, Stott & Kettleborough 2002) を適用した。この方法で、温暖化シグナルの増大と、地上気温観測データの集積によって、予測の不確実性をいつまでにどれだけ低減できるかを評価した。データが少ない場合は、ASK法では余計な誤差が生じるため、制約可能性がない。しかし、2049年まで観測データがたまると、2090年代のdT将来予測の不確実性制約が可能になり、生の予測の不確実性幅に対して60%以上低減することが出来る。
本研究の結果は、気候政策の逐次意志決定に関する研究に対して、実現可能性の高い不確実性低減の情報を提供可能であることを示している。