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[AHW18-P07] 神奈川県西部におけるイベント降水の酸素同位体比特性
キーワード:箱根山、酸素同位体比、雨量効果、降水イベント
水循環を説明する有効なツールとして広く知られているのが、降水の同位体比である。神奈川県西部箱根山東麓に位置する神奈川県温泉地学研究所では、降水イベントごとに採水を行い、同位体分析を行っている。本研究では、神奈川県西部における降水の同位体比の変動要因について明らかにするため、温泉地学研究所の2012年12月から2013年11月までの計79回の降水イベントの酸素同位体比データ及び、降水量データを使用し解析を行った。2013年の酸素同位体比の年間加重平均値は、-7.62‰であった。1年を6つの季節に分け、各季節の加重平均値を求めたところ、冬に-11.10‰、春に-5.76‰、梅雨季に-8.52‰、夏に-6.63‰、秋霖季に-7.02‰、秋に-5.81‰を示した。これらの値は、年間加重平均値からみると、冬と梅雨季に低く、それ以外の季節に高い値を示し、明らかな季節変化が認められた。本研究では、同位体比の季節変化の要因を解明する手始めとして、冬と梅雨季に同位体比が低くなる要因について検討を行った。最も同位体比が低い値を示した冬は、低気圧による降水が多かった。勢力の強い南岸低気圧が通過するとき、-10‰以下の非常に低い同位体比を示す傾向がみられた。冬季の同位体比低下要因として、温度効果の影響が考えられる。次に低い値を示した梅雨季は、そのほとんどが梅雨前線による降水で降水強度が強かった。そのため、雨量効果が大きく影響したと考えられる。降水量と酸素同位体比の関係には、全てのイベントを対象とすると、明瞭な相関関係(R2=0.83)がみられ、雨量効果が明瞭に認められた。しかし、秋霖季の台風の際の、降水量100mm以上3回のイベントにおいては、それらの同位体比がそれぞれ-5.2‰、-6.5‰、-9.3‰と必ずしも低い値を示さない例が認められた。降水量が多いにも関わらず、同位体比は低くなっていなかったことから、台風時の同位体比の形成プロセスは他の原因とは異なることが予想される。