日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW19] 都市域の水環境と地質

2016年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 202 (2F)

コンビーナ:*林 武司(秋田大学教育文化学部)、鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所 総合技術開発部)、西田 継(山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)、浅田 素之(清水建設株式会社)、滝沢 智(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)、座長:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、滝沢 智(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)、西田 継(山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)

13:45 〜 14:00

[AHW19-01] 1,4-ジオキサンによる土壌・地下水汚染機構についての考察

★招待講演

*中島 誠1日高 レイ1 (1.国際航業株式会社)

キーワード:1,4-ジオキサン、土壌・地下水汚染、汚染機構、不飽和土壌、土壌カラム試験

1,4-ジオキサン(DXA)の土壌環境基準項目への追加が予定されている。DXA(C2H8O2)は、水と密度がほぼ等しい常温で無色透明な液体であり、沸点が101℃と比較的低く、水にも油にも溶けやすい、揮発性有機化合物(VOC)である。このような性質から、溶剤として広く使用されており、過去には1,1,1-トリクロロエタン(MC)の安定剤として多量に使用されていた。DXAは、土壌中では有機物に吸着しにくく移動性が高い物質であると考えられ、他のVOCに比べて揮発性が低いため、土壌・地下水汚染機構に他のVOCとの違いがある可能性がある。
著者らは、1,4-ジオキサンの土壌・地下水中での挙動特性を把握し、土壌・地下水汚染機構について考察することを目的として、固相-液相間および液相-気相間での分配試験および三種類の土壌カラム試験を行った。これらの試験に用いた土壌は豊浦砂と有機質土の二種類であり、DXAと共存していることが多いと考えられるMCの挙動と比較した。
分配試験では、DXAのほとんどが土壌水中に存在し、土粒子への吸着分と間隙ガスへの揮発分が非常に少ないこと、およびMCがNAPLとして水中に存在する場合にはMC相の存在がDXAの分布に影響を与えないことが把握された。
不飽和土壌における揮発特性を把握するための土壌カラム試験では、不飽和帯にDXA汚染土壌が存在する場合、汚染土壌から揮発したDXAが土壌ガス中を上方に拡散する間に各深度で土壌水中に溶け込むため、表層付近の土壌ガス中にDXAが拡散してくる可能性が低く、途中の深度で土壌溶出量が土壌環境基準を超える状態になる場合もあることが把握された。
不飽和土壌中における降雨時の浸透特性を把握するための土壌カラム試験では、不飽和土壌中のDXAは降雨浸透による水分の供給があればその水分中に溶解し浸透していきやすく、降雨浸透による水分の供給がなければそのまま高濃度で存在し続けることが把握された。このことは、降雨浸透のない建屋下等ではDXAが不飽和土壌中に高濃度で残っていた存在し続ける可能性があること、建屋等を解体して更地にしたことによりそのDXAが帯水層まで浸透して地下水汚染を引き起こすという可能性があることを示唆している。
本研究では、不飽和帯におけるDXAの挙動特性を把握することにより、DXA特有の土壌・地下水汚染機構について考察した。
本発表の内容は、環境省の環境研究総合推進費(5-1503)で得られた成果の一部である。