日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW19] 都市域の水環境と地質

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*林 武司(秋田大学教育文化学部)、鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所 総合技術開発部)、西田 継(山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)、浅田 素之(清水建設株式会社)、滝沢 智(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)

17:15 〜 18:30

[AHW19-P03] 大都市の浅層地下水の地球化学的特性について —東京都品川区とその周辺における事例研究—

*安原 正也1稲村 明彦2中村 高志3浅井 和由4 (1.立正大学地球環境科学部、2.(国)産業技術総合研究所、3.山梨大学国際流域環境研究センター、4.(株)地球科学研究所)

キーワード:東京、大都市、浅層地下水、地下水汚染、同位体、水質形成プロセス

現代の多くの大都市は,遠方から運んできた大量の地表水によりその発展が支えられてきた.この様な中,日本では1995年の阪神・淡路大震災を契機に,防火用,生活用,飲料用の緊急用水源として都市の地下水への関心が急速に高まった.さらに,近年は冷却用,散水用,親水環境の創生や保全,ヒートアイランド現象の緩和に向けても,都市の自己水源としての地下水の有効性が強く認識されるようになってきた.地下水を適切に利用するシステムを構築することができれば,災害に強いと同時に,地球環境に優しいエコロジカルな都市,持続的発展が可能な未来型の都市への転換が期待できる.そのためには,まず質・量の両面から現代の都市における地下水の実態を正確に把握しておくことが必要である.一方で,都市では土地利用の改変によって地下水涵養量の減少が生じる.さらに,人工的な水利用システムと排水システムが加わり,これらが新たな地下水のソース(水道管や下水道管からの漏水による地下水涵養量の増大),あるいはシンク(下水道管等の地下構造物への地下水の排水)として働く.この結果,都市の地下水システムは質と量の両面で極めて複雑なものとなり,その正確な実態把握を難しいものにしている.
都市の地下水について,著者らはこれまで東京都・武蔵野台地の石神井川流域(小平市,西東京市,練馬区,板橋区,豊島区,北区)を対象に,マルチトレーサーを利用した地球化学的手法に基づいて浅層地下水の起源と水質形成プロセスについて検討を行ってきた.その結果,浅層地下水の水質汚染の指標となる硝酸イオン,硫酸イオン,塩化物イオン濃度は下流域に位置する都区部において特に高濃度であることを明らかにした(たとえば,安原ほか,2014).また窒素とイオウ同位体比の検討結果から,下水道管からの漏水(下水漏水)が都市の地下水水質に大きな影響を及ぼしている現状を指摘した.今回はこのような先行研究に続き,大都市の地下水についてさらに研究事例を積み重ねる目的で,東京都品川区と周辺部における湧水と浅井戸の地下水を対象に2015年11月に地球化学的調査を行った.研究地域は武蔵野台地(荏原台・目黒台・淀橋台),目黒川・立会川沿いの谷底低地ならびに東京湾沿いの沖積低地からなる.日本地下水学会「都内湧水めぐり(有栖川宮エリア・目黒エリア)」(http://www.jagh.jp/jp/g/activities/torikichi/spring/20140830.html)に掲載された水質データも参照しながら,品川区とその周辺部の浅層地下水の水質の現状と,水の起源ならびに水質形成プロセスについて検討した結果を報告する.