日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS03] Marine ecosystem and biogeochemical cycles: theory, observation and modeling

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*伊藤 進一(東京大学大気海洋研究所)、平田 貴文(北海道大学地球環境科学研究院)、Hofmann Eileen E.(Old Dominion University)、Charles Stock(Geophysical Fluid Dynamics Laboratory)

17:15 〜 18:30

[AOS03-P08] Numerical simulation of the winter red tide of Eucampia zodiacus in the Harima-Nada

*阿部 真己1畑 恭子1西嶋 渉2 (1.いであ株式会社、2.広島大学)

キーワード:ecosystem model, diatom, Eucampia, red tide, Harima-Nada

沿岸域は、海洋の中でも人為起源の影響を大きく受ける領域であり、人間社会とのかかわりも密接な海域である。
特に、冬季の瀬戸内海(播磨灘など)では、最近数10年スケールで、海域の栄養塩が枯渇する「貧栄養化」という視点の問題が生じており、ノリの色落ち問題など、人間活動に直接影響を与える問題にまで発展している。
この数10年スケールの海域の栄養塩の変遷は、同じ時間スケールで生じている植物プランクトンの種の変遷と連動しているという仮説が考えられているが、これらの仮説は未だ解き明かされておらず、将来の環境変化(どのような種の変遷と水質の変化が起こるのか)も予測できていない状況である。
ここでは、冬季の播磨灘を対象にして、植物プランクトンを、小型の珪藻と大型の珪藻の2種類に分類した低次生態系モデルを用いた、栄養塩と植物プランクトンのブルームの時空間構造の再現計算を行った。
沿岸域の特徴としては、「水深が浅い」という特徴があるが、最近数10年で冬季のブルームが顕著となった大型珪藻は、海底到達後も光環境によっては死滅せず、巻き上げに伴って回帰する取り扱いを行うことで、パッチ状のブルームの規模とタイミングをよく再現できることが明らかとなった。
また、種の異なるパッチ状のブルームに対応して、栄養塩水質の時空間的な構造も捉えられている。
この結果は、仮説を基に構築したモデルを用いた現場データとの検証を行うことで、植物プランクトンの沿岸域スケールの競合の具体的な機構を解き明かしつつある事例でもあり、観測のみでは得られない情報をモデルを用いた数値実験により補間できた事例でもある。