日本地球惑星科学連合2016年大会

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インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG04] Earth and Planetary Science Frontiers for Life and Global Environment

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、高野 淑識(海洋研究開発機構)、加藤 真悟(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、柳川 勝紀(九州大学大学院比較社会文化研究院)、横山 正(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)

17:15 〜 18:30

[BCG04-P05] Biogeochemistry and subglacial meltwater limnology in East Antarctica: insight from microbial response with subglacial silica input in a perennially ice-covered lake at Rundvagshetta

*高野 淑識1横山 祐典2福井 学3 (1.海洋研究開発機構、2.東京大学 大気海洋研究所 高解像度環境解析研究センター、3.北海道大学低温科学研究所)

キーワード:Biogeochemistry within subglacial weathering, Subglacial meltwater limnology and microbial ecology

南極氷床下には,基盤岩に接する氷の部分融解により液体の水(subglacial meltwater)が存在することがある。そのような氷床下の水は,地底湖を形成するほか,一部は伏流水となり,水脈に沿い,大陸縁辺部に向かって流れてゆく(e.g., [1])。氷床下の水脈は,基盤岩との物理的削剥や化学的な水-鉱物相互作用(subglacial weathering)を経て,無機態の炭素(relic 14C)のほか,窒素,鉄,シリカ等の栄養塩をわずかに供給・運搬する。氷床下の伏流水の恩恵を受けるのが,氷床縁辺部の微生物生態系である。南極全体の約1%程度は,完新世の氷床後退により,かつて氷床に覆われていた場所が露岩域となっている。そのような氷床縁辺部には,かつての氷食作用の形跡が見られる他,氷河性の湖沼が存在する。では,水の収支や物理・化学的特徴が,そこに棲息している(棲息してきた)基礎生産者にどのような影響を与え,全体の微生物相は,どのように応答しているのだろうか。これらの全体像について,基礎的な記載が非常に少なかったため,我々は,東南極氷床のルンドボークスヘッダ地域の氷床縁辺部にある氷河湖を対象に,完新世の地史的背景と生物地球化学プロセスの記載を行った。永年的な氷に被覆された湖底には,少なくとも約6000年前から微細な氷河性砕屑物の堆積作用が始まっていた。初生的な基礎生産者は,同時期の海成湖沼(Lake Skallen [2])でも観察された珪藻(Chaetoceros)であることが分かった。その後,氷床後退に伴うアイソスタティックリバウンドによる隆起と離水の後にも基礎生産者は,Chaetocerosに近縁な種が卓越しており,離水後に基礎生産者が,大気CO2(modern 14C)と大気N2に依存したシアノバクテリアに変遷するスカーレン地域とは,対照的な結果となった。ルンドボークスヘッダでは,無機態の炭素(relic 14C)を含む,氷床下の伏流水(窒素,シリカ等)に依存した独特の生態系を形成していることが明らかになった[3] 。
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[References]
[1] Wingham, D., Siegert, M., Shepherd, A. and Muir, A. (2006) Rapid discharge connects Antarctic subglacial lakes. Nature 440, 1033-1036.
[2] Takano, Y., Kojima, H., Takeda, E., Yokoyama, Y., and Fukui, M. (2015) Biogeochemistry and limnology in Antarctic subglacial weathering: molecular evidence of the linkage between subglacial silica input and primary producers in a perennially ice-covered lake. Progress in Earth and Planetary Science, 2:8. doi: 10.1186/s40645-015-0036-7.
[3] Takano, Y., Tyler, J.J., Kojima, H., Yokoyama, Y., Tanabe, Y., Sato, T., Ogawa, O.N., Ohkouchi, N. and Fukui, M. (2012) Holocene lake development and glacial-isostatic uplift at Lake Skallen and Lake Oyako, Lutzow-Holm Bay, East Antarctica: based on biogeochemical facies and molecular signatures. Applied Geochemistry, 27, 2546-2559.