日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT05] 地球史解読:冥王代から現代まで

2016年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 105 (1F)

コンビーナ:*小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、座長:山本 伸次(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

10:45 〜 11:00

[BPT05-07] 冥王代海洋地殻組成の推定とその含水融解実験:冥王代海洋・大陸地殻組成の解明に向けて

*近藤 望1小木曽 哲1 (1.京都大学大学院人間・環境学研究科)

キーワード:冥王代、大陸地殻、コマチアイト、含水融解実験

地球が形成された直後の冥王代(40億年前以前)に、マントル-地殻分化がどのように起こり、海洋地殻・大陸地殻がどのような組成を持っていたのかを知ることは、地殻の抽出・リサイクルによるマントルの化学進化や、地殻から水圏への生命必須元素の供給が初期生命の誕生・進化過程へどう影響したか影響を理解する上で重要である。冥王代ジルコンの分析から、当時液体の水や花崗岩質-安山岩質のメルトが存在したことが示唆されているが (Trail et al. 2007; Hopkins et al. 2010) 、そのメルトの生成過程や組成は未だよくわかっていない。冥王代にはマントルが高温であった可能性が高く、高温なマントルから生成する海洋地殻はコマチアイト質となることが先行研究から示唆されている (Takahashi 1985) 。高温なマントルにより地殻の温度勾配も高かった可能性があるため、このコマチアイト質海洋地殻が沈みこむ際に含水融解して珪長質メルトが生成し、大陸地殻を形成した可能性がある。しかし、コマチアイトの含水融解実験はほとんど行われてこなかったため、コマチアイト質海洋地殻が大陸地殻形成に関わった可能性もよく検証されていない。本研究では、高温高圧実験によってコマチアイトの含水融解時に生成されるメルトの主成分元素組成を決定し、冥王代大陸地殻の形成過程や化学組成に制約を与えることを目指している。

本研究ではこれまでに、高温なマントルにおける対流モデル(Korenaga 2009; Foley et al. 2014)を参考に、冥王代の火成活動様式と海洋地殻組成を推定した。冥王代の海洋地殻は、プレートテクトニクス開始以前は、厚い(〜200 km)リソスフェアの底部における微小部分融解度での融解で生じたメルトによって形成され、プレートテクトニクス開始以降は海嶺下での大部分融解度での融解で生じたメルトによって形成したと考えられる。そして、それぞれの状況で生成されるメルトの主成分元素組成を高温高圧実験(Kondo et al. Submitted)と、pMELTSによる計算によって決定した。いずれの状況でも、生成されるメルトはコマチアイト組成であるが、FeOとMgOの含有量に大きな差があることがわかった。これら2種類のコマチアイト組成を持つ出発物質を、酸化物・炭酸塩試薬の混合によって合成し、ピストンシリンダー型高圧発生装置を用いて含水融解実験を行った。実験では、特に酸素フガシティーが目的の値に保持されているかを注意深く分析、検討した。本発表では、推定した冥王代海洋地殻の組成と含水融解実験の経過について報告する。