日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT05] 地球史解読:冥王代から現代まで

2016年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 105 (1F)

コンビーナ:*小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、座長:山本 伸次(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

12:00 〜 12:15

[BPT05-12] ガーナ/ベリミアン帯陸上掘削(GHB)速報: 古原生代の海洋底環境復元プロジェクト

*清川 昌一1伊藤 孝2池原 実3山口 耕生5尾上 哲治4堀江 憲路6吉丸 慧1三木 翼1Tetteh George7Nyame Frank8 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星部門、2.茨城大学教育学部、3.高知大学海洋研究総合コアセンター、4.熊本大学理学部、5.東邦大学理学部、6.国立極地研究所、7.University of Mines and Technology, Tarkwa、8.University of Ghana, department of Geology)

キーワード:古原生代、ベリミアングリーンストーン帯、海洋性島弧

古原生代では,大陸集合・分裂イベントがおこり,浅い海底が広がるとともに,大気中の酸素濃度上昇事件(Grate Oxidation Event)や,真核生物の台頭が始まり,地球表層が大きく変化したと言われる (e.g. Holland, 1994, Condie 1997, Kopp et al, 2005).表層の急激な酸化作用により,海底では極度の還元環境に陥るとも言われている.しかし,深海底の地質学的証拠はほとんど報告がない.これは,原生代の深海底の地層は付加や衝突帯のみにしか残っていないためである.
我々は古原生代における比較的深い海底の環境変遷を明らかにするために,ガーナ,ベリミアン(Birimian)グリーンストーン帯の堆積層について,陸上掘削(Ghana Birimian Drilling project: GHB)を行った.ベリミアン(Birimian)グリーンストーン帯は,古原生代のグリーンストーン帯で,古くから金やマンガン鉱床が知られている.内陸はジャングルのために,鉱山以外での地質構造や層序の復元は難しく,詳細な研究は報告がない.
我々の調査地域であるガーナ南西部ケープスリーポイントベリミアン海岸は, 約22-21億年前の花崗岩が貫入した古原生代の海底堆積物が数キロにわたって連続露出している.特に海岸線の西部は500m以上にわたって蛇紋岩帯,東部には枕状溶岩が報告されており,古原生代の海洋底断面が残される可能性が高い.我々は,全体の地質構造の把握を行って来た.断層や褶曲構造を考慮して,代表的な柱状図を作成してきた.地層層序の連続性が良く,そのほとんどが東上位の変形の整然として地層が連続する.全層厚は約3000mにおよび,変形した枕状溶岩および火山砕屑岩がかさなり,数回の厚い火山砕屑層を挟み,徐々に細粒化する. 20-50m厚の上方細粒化層した火山砕屑層と黒色頁岩層の互層が挟まれており,上方ほど細粒砂岩からシルト層の頻度が増え,薄層化する.上方ほど細かな平行葉理をもつタービダイト性火山岩や黒色頁岩が増加し深海化する.最上部は,再堆積した細粒火山砕屑岩と黒色頁岩互層からなる.
Ghana Biriman drilling project(GHB-1)は,最上部について195mの掘削に成功した.掘削地はAkodda集落とEzile bayの境界部分に露出する堆積物であり,細粒火山性堆積物の互層が連続して露出する.掘削は45度南東方向に地層に直交方向でおこなった表層から30m までHQコア,30~195mまでNQコアを使用した.表層10mほどから風化を免れた新鮮なコアが取得された.予察的な観察では,ほとんどが火山砕屑岩のタービダイト層であり,上位ほど細粒の緑色-黒色シルト層が増える.最上部の細粒堆積物には続成作用でできた結晶粒子が多く含まれており,陸上で見られたスフェルールを含む風化した地層は,この粒子が起源だと思われる.